試写では鼻をすする音が…とにかく泣ける!長澤まさみ主演『パレード』の藤井道人監督が明かす友情秘話
Netflixオリジナル作品として2月29日から配信予定の映画『パレード』。長澤まさみ(36)、坂口健太郎(32)、横浜流星(27)、寺島しのぶ(51)、リリー・フランキー(60)、田中哲司(58)などトップクラスの俳優陣が集結した作品とあって、配信前から話題だ。 【圧巻の演技】長澤まさみ・ネットフリックス話題作で見せた美しすぎる横顔 2月某日、私は渋谷の映画館『ユーロスペース』で行われた本作の試写会に足を運んだ。この映画館は作品のロケにも使われ、監督の藤井道人氏(37)がインディーズ時代に何度もイベントを行ったという『パレード』の聖地。藤井監督が明かした制作秘話など、視聴前に知っておきたい見どころを紹介したい。 ◆死後に探し続ける、どうしても会いたい人 『パレード』は、津波に巻き込まれて亡くなった美奈子(長澤)が海岸に漂着するところから始まる。美奈子は自分の死を認めることができず、戸惑っていた。唯一、会話ができた元小説家志望の青年のアキラ(坂口)に連れられて行った先は、この世に未練がある人たちが集まる場所だった。そこでは元映画プロデューサーのマイケル(リリー・フランキー)、元スナックのママのかおり(寺島)、元銀行員の田中(田中)らが、楽しそうに生活していたのだ。 「お姉さんはもう死んでて、なんかやり残したことがあるから(現世よりも)先には行けていないってこと」 元ヤクザの勝利(横浜)にそう言われても、美奈子は納得できない。シングルマザーとして必死で育ててきた息子の安否さえ分からないのに、自分の死をどうしたら受け入れられるのだろうか。そんな最中、アキラから、とある誘いを受けて出かけると、そこには無数の故人たちがまるでパレードのように大勢、連なって歩いていた。 「月に一度、新月の夜に探すんです。それぞれの会いたかった人を」 そう言うアキラ。美奈子、アキラ、勝利、かおり、そして後からメンバーに加わる元女子高生のナナ(森七菜・22)らはそれぞれに会いたい人を探しに出かける。そこには五人五様の切ない物語があるのだ。彼らは“その先”へ行くために、自分の手で物語を完結させるために動く。仲間同士で励まし合いながら、時には手を貸すこともある。 「なんか変だよな、死んでも誰かと一緒にいるなんて思ってもみなかったよ」 見た目も亡くなった年齢も、すべてバラバラなメンバーたち。ただ、目的が同じだからか、とても仲良しに見えてくるから不思議だ。アキラいわく「現世に未練がある人たちが集まる」場所は、全国各地にあるらしい。 没後の世界がどんなものか不安でしかたなかったけれど、ひょっとしたらこの映画のように集合するスペースがあって、導かれて、毎日マイケルのように酒を飲んで、カラオケを歌えるのかもしれない。安堵するように期待をしてしまった。 試写上映中、映画に没入して泣いているのは私だけではなく、マスコミ以外に呼ばれた映画ファンたちもまた涙していた。鼻水をすする音があちこちから聞こえてくる。ノンフィクションではない死後の世界の物語に、なぜこんなに引き込まれるのだろうか。答えは試写会終了後に行われた、藤井監督のコメントにあった。 ◆今は亡き映画プロデューサーへの想いが込められた物語 元々この映画を企画していたのは、一昨年、急逝した映画プロデューサーの故・河村光庸氏だそう。藤井監督はこう話す。 「河村光庸は……僕が大人になって初めてできた友達ですね。2022年の11月には撮影をしたいと言っていたのに、急に亡くなってしまいました。残されたスタッフが皆、迷っている中、なんとか完成させたいという思いがありました」 『パレード』の脚本は河村氏の死後2日後に、藤井監督が書き始めたという。だからこそ、ファンタジー作品なのに盟友との別れに対する感情がこもっていて感情が揺さぶられたのだ。藤井監督は脚本執筆中の思い出として、横浜流星のことを話した。 「(河村氏の没後)ひどく落ち込んでいたとき、東京から離れて脚本を書いているときに……彼(横浜流星)は『一人になると良くないから』と、ずっと隣にいてくれた。初稿を最初に読んでくれたのは彼です」 作品そのものの訴求力にも魅せられたけれど、まるでアナザーストーリーのような制作秘話の数々。これはお涙ちょうだい物語ではなく、人なら誰しもが一度は想像する憧憬の映像化だ。 当たり前だけど、人間はいつか死ぬ。ひょっとしたら明日、訪れるかもしれないし、この先何十年も生きて老衰していくのかもしれない。希死念慮はないので、私はいつか訪れるその日に対して、漠然とした不安を常に抱えている。自分だけではなく、周囲の人間の死もまた不安要素だ。そんな思いに対するアンサーが『パレード』にはあった。 取材・文:小林久乃 小林久乃(こばやし・ひさの)/エッセイ、コラムの執筆、編集、ライター、プロモーション業など。著書に『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)、『45センチの距離感 つながる機能が増えた世の中の人間関係について』(WAVE出版)、『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)がある。静岡県浜松市出身。X(旧Twitter):@hisano_k
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