フジ『大奥』、男女逆転のNHKと違った「逆転」で閉幕。“最たる逆転”は亀梨和也演じる将軍が死後も妻に託した思い
安田顕、転落する悲劇の悪役。夢に出そうな凄まじさ
安田顕は、第1話からやけに悪代官のように陰湿そうな田沼を熱演していたのだが、最終回も完全にかっさらった。 いろいろ策を講じて政治の中枢をなそうとした田沼だったが、結局、失墜、悪名ばかりが残ったが、やがて時代が変わると田沼政治が懐かしいと思われてしまう皮肉めいた役割で、キャラクターとしては深堀りがいのありそうなおもしろい役だ。 田沼は歴史的観点からしても、かつては賄賂(わいろ)政治を行った悪者のようにも思われていたが、家治を補佐して江戸の貨幣経済の礎を築いた点は高評価とされている。『大奥』では徹底的に策略家で、因果応報、転落する悲劇の悪役となった。燃え盛る大奥のなかで、自刃するときの顔が歌舞伎のにらみのような凄まじさで夢に出そうだった。 昨今、さらりとナチュラルな演技をする人が多いなか、安田のように舞台演技のようなことができる俳優は貴重だ。しかも、型をつくってそこにちゃんと感情を入れていくということができて、その型も感情も尋常じゃなく突き詰めているように感じる。 今回もちょっと笑える域までいってしまい、『大奥』って誰が主役でなんの話だったっけ?と、田沼しか覚えてないほどになってしまうことが良いのか悪いのかよくわからないが、安田顕は時として、「舞台あらし」と呼ばれた北島マヤのようになってしまう俳優なのだ。それが作品を思いがけないものにしてすごくいいのだ。
本多力 実は雇われ暗殺者だったが最後は…
本多力は現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』に、藤原道長(柄本佑)の使用人・百舌彦(もずひこ)役で出ている。 『大奥』では朴訥(ぼくとつ)な使用人かと思わせて、大河『鎌倉殿の13人』で人気だった善児(梶原善)のような役回りで驚かせた。定信に雇われ暗殺者のような仕事をしていたが、最後は善の感情が勝り、定信に意見して果てるというとても見せ場の多い役となった。 わりとほのぼのした役の印象のあった本多だが、新たな可能性を提示したのではないだろうか。
小芝風花と安田顕、まったく違う雰囲気でさっそく共演
小芝風花と安田顕は、4月期は、 NHKの現代劇、『天使の耳~交通警察の夜』でまったく違う雰囲気役で共演。亀梨和也はテレビ朝日の恋愛ミステリー『デスティニー』に出演する。これらもチェックしたい。 最後に、西野七瀬さん、ご結婚おめでとうございます。 <文/木俣冬> 【木俣冬】 フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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