フジ『大奥』、男女逆転のNHKと違った「逆転」で閉幕。“最たる逆転”は亀梨和也演じる将軍が死後も妻に託した思い
60年代から『大奥』ドラマ化のフジテレビ、令和にどう描いた?
さんざん大奥での女性同士の陰湿な虐めを描いたすえ、芽生えた女性たちの連帯の象徴を三つ葉葵に見立てるという冴えたアイデア。 このラストをまず決めて、逆算して作ったのかもしれない。前半の虐め描写の数々が執拗過ぎたことも、最終回、女たちが足を引っ張り合うのではなく連帯する時代への希望のためだったのだろう。 前半はなかなかしんどい描写も多かった。60年代から『大奥』をドラマ化してきたフジテレビが、令和では大奥をどう描くかと期待したら、ファッション業界の壮絶な女の戦いを描いてヒットした『ファーストクラス』(14年)の時代劇バージョンのような雰囲気で、ハラスメントにはうるさく、女性の連帯がトレンドの令和において、あえてのキャットファイトが展開されたのだ。 将軍の継承者たる男子を生むことが女性のゴールで、正室といってもそれができなければ、男子を産んだ側室の立場のほうが上になる。 女のプライドに懸けて、家治の寵愛を我が物にすべく自分磨きを頑張るならまだしも、子供ができないように薬を毒に取り替えたり、子供を暗殺しようとしたり……。倫子が家治の床に呼ばれる晴れ舞台の日、お風呂で身を清めようしたら、汚物を入れられていたというエグいエピソードまで。 長らく倫子に尽くしてきて唯一信頼できたお品が家治の子を身ごもる愛憎劇に至っては、よくここまでしんどい描写を書いたなあと思った。でもこういう通俗性はネット漫画ではよくあり愛読されているし、近年、敷居が高くなっている時代劇に新しい層を呼ぶうえでは最適解かもしれない。
凛とした小芝風花。亀梨和也、宮舘涼太ら男性陣にもナットクの見せ場が
そして、小芝風花は、どんなにしんどい目にあっても、最後まで清く正しく凛としていた。 倫子に女の子が生まれ、その子をとても大事にしている表情にもほっとした。 思うところあって真意をなかなか見せない家治を演じた亀梨和也は悲劇の将軍を見事に演じていたし、宮舘涼太はヒールの松平定信を演じきり、配信されているスピンオフでは主演をつとめるほどだ。 女性が主役のドラマながら、男性陣にもナットクの見せ場があった。とりわけ勝手に功労賞を差し上げたいのはこのふたり。田沼意次役の安田顕と、猿吉役の本多力が鮮烈である。