「大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間」...アパホテルが騙された12億の地面師事件の現場となった土地の”奇妙な変遷”
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第48回 『「高齢女性が1億のビルを主治医に贈与しようとしているらしい」...病院を舞台に、持ち主の知らぬ間に「融資や売却が繰り返される」地面師詐欺に発展』より続く
大都会の異様な空間
アパ事件は、名のある大手企業が騙されたという点で、積水ハウスの事件と似ていなくもない。実は、なりすまし役の手配師も同一人物であり、バックには大物地面師の影がちらつく。だが、積水ハウスとは異なる特徴もある。事件を振り返る。 その土地は、外堀通りの旧日商岩井ビルから6本木通りに抜ける道路沿いにある。オフィスビルや飲食店のテナントビルが犇めき合い、昼夜問わず人通りが絶えない。そんな都心の一等地に不似合いな駐車場だ。 道路に面した東側以外、三方をオフィスビルに囲まれている。登記簿を見ると、その四角い土地の面積は378平米、114坪ほどある。実際、現場に行ってみると、けっこう広い。 地面はアスファルトではなく、傷んだ古いコンクリート張りで、道路側の金網には月極めの駐車場である旨の表示とレンタカー会社が「カーシェア」の看板を掲げている。道路から向かって右手には鋼鉄製の屋根があり、どうやらそこが月極めの駐車スペースのようだ。左手の野ざらしになっているところにカーシェア用の青い小型車が停まっていた。 思い返せば、この駐車場の前は何度も車や徒歩で通った覚えがある。だが、こんなに広いスペースがあったとは気づかなかった。改めて見ると、大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間に思えた。
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