【ラグビー】そうすると決めていた――廣瀬雄也[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/CTB]
絶対にそうする、と決めていた。 トヨタヴェルブリッツを相手に開幕戦を迎えた、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ。そのスターティングメンバーに抜擢されたCTB廣瀬雄也は自身で立てた誓いを実行に移す。 開始1分、敵陣でターンオーバーに成功したスピアーズはすぐさま展開。中央22メートル線をやや越えた位置を起点に左サイドへと振る。SHブリン・ホール、SOバーナード・フォーリーを経由したボールは、走り込んできたリーグワン初先発のルーキーへと渡った。 オレンジのインサイドセンターは一切の迷いなく、勢いそのままに正面突破を図る。加速をつけて体ごと押し込み、およそ5メートルのゲインに成功。デビュー戦の最初のボールタッチで役割を果たした。 「あれはもう決めていました。試合前にノートを書くんですけど、そこにも『ファーストプレーは絶対に120%で当たりにいく』と。緊張するとわかっていたし、そういうときの最初のプレーは、成功でも失敗でも思い切りやることが大事だと思っていました。それが120%でできたので、そこからいいプレーにつながっていったのかなと思います」 その後、後半30分まで出場し、チームの劇的な逆転勝利に貢献。続く第2節、惜しくも星は落としたものの、埼玉パナソニックワイルドナイツとの大一番でもスタメンに名を連ねた。 入団当初、明治の前キャプテンは国内最高峰のレベルに苦しんだ。プレッシャーや体の強さに対応できず、当たれば弾かれ、何度もボールキャリーの失敗を繰り返した。 昨年3月15日の横浜キヤノンイーグルス戦では、背番号22で初めてアーリーエントリーされたが、最後まで出番は回ってこなかった。開始早々から常に先行され、最終盤に逆転勝利を果たすゲーム展開だっただけに、余計に悔しさは募った。 このままで終わりたくない。その思いが自身を駆り立てた。 大学時代から続ける、食事を含めたフィジカリティの強化により力を入れた。普段の練習やプレーシーズンマッチを通して、少しずつ強度に順応していった。 「リーグワンのスーパーな選手たちとたくさん体を当て合わいといけないな、と思っていました。失敗もありましたけど、繰り返すうちに慣れて、いまはそれを強みにできていると思います」 スピアーズの今季のルーキーは粒がそろう。既に日本代表に選出されているPR為房慶次朗、アーリーエントリーで昨季から出場機会を得るHO江良颯、プレーの幅が広いUTB山田響も今季はプレータイムを徐々に増やしている。 ワイルドナイツ戦後の記者会見。フラン・ルディケHCは、「彼らは才能があって獲得してきた選手。廣瀬や山田はプレシーズンマッチでいいプレー見せたのでチャンスを与えた。格上を相手にいいパフォーマンスでよかったと思う。若い選手全員が貢献してくれている」と高く評価する。 廣瀬自身にも強い自覚がある。10分ほどのぶら下がり取材のなかで、幾度となく「リード」「引っ張る」と口にした。再びのリーグワン制覇を成し遂げるためには自分たちの世代が成長を続け、主軸にならなければならない、と考えている。 もちろん現状、定位置を確保できたとまでは言い切れない。同じポジションにはキャリア豊富な実力ある選手が居並ぶ。より明確なブレイクスルーを果たすため、いまはただ前を見すえて進むだけだ。 (文:三谷 悠)