訪日中国人観光客の間で急増する闇ビジネス"免税品転売"のヒドい実態
――なぜ、中国人が多く関わっているのでしょうか? 高口 中国人なら必ず利用しているSNSアプリに『WeChat』があります。ここで動員して、金銭のやりとりもアプリ内で可能。また、中国人の利用するコード決済は、日本への旅行者限定で【〇〇デパートでの買い物なら10%還元!】といったキャンペーンを行なっています。 このキャンペーンも買い子にとって"おいしい収入"となります。なので、有名百貨店で扱われる時計やバッグなどのハイブランド品、品薄のゲーム機や家電商品などの高額商品が転売商材となっているのです。中国のSNSやコード決済と日本の免税制度を悪用した闇のエコシステムが完成されているのです。 ――そもそも中国のコード決済は日本で利用できる? 高口 百貨店や家電量販店はもちろん、スーパーやコンビニでも利用できます。日本では14年にインバウンド需要を見込んで消費税免税制度の改正を行ない、これにより免税品を取り扱うお店が増えました。そして、多くのお店が中国人用のコード決済端末を採用したのです。 ――では、日本の免税制度の問題点とは? 高口 多くの国では空港から出国時に免税額が還付される事後免税制度を導入しています。一方、日本の場合は購入時にその場で免税される即時免税制度。 空港だけでなく、スーパーや大手家電量販店でもこのような免税制度が採用されているため、免税品をどこでも購入することができます。それもあり、免税品の転売が増えた経緯があります。 ――このほかにも免税転売が増えたと考えられる理由は? 高口 もともと中国人の間では「代購」という、日本で大量購入した日本メーカーの商品を中国に発送して転売する行為が一般的で、これはしっかり儲かる商売でした。 しかし、近年は中国に進出した日本メーカーが"正規品"の販売を行なうようになり、こちらのほうが価格も安く偽物をつかまされる心配もありません。代購が成り立たなくなってきたことも、国内での免税品の転売が増えた理由のひとつでしょう。 ――現在、日本政府は2025年以降をメドに、訪日外国人に対して一定額以上の免税品購入があった場合、空港での現物確認後に消費税を還付する事後免税制度の導入を目指しています。これは中国人には効果ありですか? 高口 転売グループは抜け道を見つけそう(笑)。制度が複雑化してまじめな観光客だけが損をする結果にならないよう、デジタル化で手続きを簡素化することが必須です。 ――現在、店舗側が独自のレジシステムや口頭での注意で対応している訪日外国人の免税品購入。これは政府の迅速な対策が必要です! 写真/Natsuki Sakai/アフロ Rodrigo Reyes Marin/アフロ AP/アフロ VCG/アフロ 取材・文/直井裕太