選手が監督“突き飛ばし”の事件「まずいぞ」 Vで歓喜も…肝を冷やした瞬間
1996年日本Sは第1戦先発…指揮官から「星野はどこで投げたい?」
喜び勇んで、我先にと急いで駆け出したのだろうが、まさか仰木監督を突き飛ばしていたとは、星野氏は思ってもいなかった。「聞いた時は『マジすか』でしたよ」。まさに冷や汗ものだったが、仰木監督からは何も言われなかったそうだ。「監督は(胴上げのために)後からゆっくり(グラウンドに)出てきましたからね。ただ、僕に突き飛ばされたのはきっと監督は覚えているんだろうなって思いますけどね」と苦笑しきりだ。 勢いあまってのこととはいえ、仰木監督にそんなことをしたオリックス選手はさすがに他にはいなかっただろう。優勝決定とともに何とも“衝撃的”な出来事だったが、その後、日本シリーズ前の練習期間中のグラウンドで星野氏は仰木監督に話しかけられたという。「急に、監督から『星野は(日本シリーズで)どこで投げたい』って聞かれたんです。監督室とかに呼ばれたわけではなく、普通の会話の中でね」。 星野氏は即答しなかった。「『僕が決められるんですか』みたいなことを言って『ちょっと待ってもらえますか』ってね。『えーっ、待つのぉ』と言われましたけどね」。前年(1995年)のヤクルトとの日本シリーズで第3戦に先発だったことも振り返りながら星野氏は考えた。「これは1戦目ってことなんだろうなと思い、15分くらいしてから監督に『初戦で行かせてください』と言いました。監督は『うん、わかった』って。その答えを待っていた感じでしたね」。 オリックスは巨人との日本シリーズを4勝1敗で制して日本一になった。星野氏は第1戦(10月19日、東京ドーム)と第5戦(10月24日、GS神戸)に先発し、好投して勝利につなげた。「たぶん監督は僕がすぐ“1戦目”って言うと思って聞いたんでしょうね。それも操作というか、そこも仰木マジックでしょう」。1996年のリーグ優勝&日本一は星野氏にとって特別な最高の思い出だ。歓喜のあまり仰木監督を突き飛ばしてしまい申し訳なく思ったことも含めて……。
山口真司 / Shinji Yamaguchi