小泉首相も驚いた…韓国外交官の英語童話、ハングルでも出版
ちょうど20年前、当時64歳だった羅鍾一(ラ・ジョンイル)駐日韓国大使(84)が東京に赴任した時のことだ。あいさつのため当時の小泉純一郎首相(82)を訪れた際に話題になったのは童話の本だった。羅大使が1983年に韓国の説話と民話をもとに英語で書いた童話の本のことだ。 小泉首相は「大使は童話作家だと聞いたが、政治学者がどうやって童話を書くのか」と尋ねた。ソウル大と英ケンブリッジ大で政治学を勉強して外交官になった羅氏が童話を出した背景への好奇心だ。 小泉首相も関心を見せた羅氏の童話が最近、韓国語に翻訳されて登場した。『夜通し遊んで』(ヘルツナイン)というタイトルで、羅氏が英語で書いた5作品の童話が翻訳されている。 羅氏が2004年に小泉首相に話した内容の要旨はこうだ。「童話は私たちが日常的に考えることができないことを異なる次元で新しく見せることができる」。今でもこの考えは変わらない。 外交・安全保障の要職を幅広く経験し、現在は東国大客員教授の羅氏は15日、中央日報に「童話は子どもの純粋さ、大人とは異なる角度から世の中を見ている」と話した。羅氏の別の童話『ビビンパの話』は中国を含む16カ国で翻訳出版された。羅氏は「いくつかの話をしていくストーリーテリングがよい」とし「外交官でなければ噺家になっていたかもしれない」と言って笑った。 英語で書いた理由は何か。外交現場で活動する前からも羅氏は英語で考えて英語で書くことが習慣になっていたという。英字新聞に定期的に寄稿もしていたところ、ふと「韓国の説話をもとに英語の童話を書いてみるのはどうか」というアイデアが浮かんだという。海外からも関心があり、出版もした。羅氏自身が現業に追われて忘れていたことを、延世大国文科のキム・チョル名誉教授が翻訳出版を勧めたという。翻訳もキム教授がした。 ストーリーの源泉は韓国の説話と民話だ。羅氏は「わが国には説話が多いが、韓国語と韓国文化をさらに広めれば、今日のK-POPや映画の滋養分になるはず」と強調した。大文豪ウィリアム・シェイクスピアの「ハムレット」とヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの「ファウスト」もそれぞれデンマークとドイツの説話から始まったとも伝えた。 今回の童話にある「竜と美女」と「妻が浮気した男」は1281年の『三国遺事』の献花歌と處容歌からヒントを得た。献花歌は新羅時代に水路夫人が望んだ崖の花を危険を顧みずに摘み取って捧げた老人の話だ。羅氏はこれを人間と自然の関係としてみる。竜は自然の超越的な権威を象徴して人間の服従を受けるが、ある日、美女が出現して人間が心を奪われると竜が拐っていくという話だ。羅氏は「これを書いた80年代には軍事政権で竜が(当時の)全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領と解釈されるとして出版禁止になったりもした」と語った。 羅氏は竜という存在に対する韓国と西欧の差にも注目した。羅氏は「西洋の神話では竜を殺して護国英雄になる話が多いが、わが国の人たちは竜を崇めた」とし「自然を征服でなく畏敬の対象にしたということ」と説明した。處容歌については「簡単に話せば不倫をした妻を見て哀れに思うという話だが、自身を裏切った人までも容赦する境地と悟りを意味する」と解釈した。続いて「シェークスピアの『オセロ』では不倫を疑った主人公が妻を殺すのと比較される」と話した。 羅氏は「『三国遺事』を読む子どもたちも最近はかなり減ったというが、実際、我々の文化の力は説話と民話にあるという事実を忘れないでほしい」とし「韓国語を守り、文化をさらに豊かにするためにも、説話を多く読むきっかけになることを望む」と語った。