朝ドラ『おむすび』賛否あるけど…“50歳俳優”に注目してみるとめっぽう面白くなるワケ
『おむすび』第一声は誰か
とはいえ、筆者は特別、橋本環奈に思い入れがあるわけでもない。『おむすび』に対して意外と悪くない始まり方だぞと感じながら、『虎に翼』ロスを引きずることなく、それなりに楽しめてしまうほんとうの理由は、実は北村有起哉にこそある。 本作の初登場は、制服を調整する橋本環奈だが、第一声は誰か。北村有起哉である。結の父親・米田聖人役を演じる。結はどれだけ準備に時間をかけているのかと、朝食の席で「結、遅くないか」と第一声。 北村有起哉と朝食。本作最大の安心材料であり、これだけでもう見ていられる。何だかいつも機嫌が悪そうな仏頂面。ぶつぶつ小言を言いながら、ご飯はちゃんと食べる。あまり健康的ではなさそうなのに、俄然生命力を感じさせる表情。北村有起哉とは、不思議な魅力の人である。
食べる系ドラマ作品にしか見えない
『ヤクザと家族』(2021年)での硬派なやくざ役から、いかにもふてぶてしいキャラクターのドラマプロデューサーを演じた『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日、2021年)まで、役柄の幅が地味に広い。食べることでいうなら、向井理と共演した『先生のおとりよせ』(テレビ東京、2022年)の中田くるみ役は最高のはまり役だった。 向井扮する官能小説家と毎回お取り寄せグルメに仲良く舌鼓を打つ同作の漫画家役は、ちょうど『きのう何食べた?』(テレビ東京、2019年)の内野聖陽が担っているように柔らかな役どころ。「何これ!」とあまりに柔らかな食レポに正直笑ってしまいそうにもなるが、北村と食べる系ドラマ作品との相性は折り紙つきである。 松重豊主演の『孤独のグルメ』(テレビ東京、2012年)以来、男性俳優、女性俳優問わず、ひとり飯を満喫するドラマ作品は量産されている。玉石混淆の中、北村が仏頂面キャラを生かした、ひとり飯&誰かとの共有飯しっぽり飲み系ドラマ主演作『たそがれ優作』(BSテレビ東京、2023年)は、北村ファンにはたまらない大好物ドラマだったろう。 その意味でも『おむすび』は、橋本環奈主演の朝ドラではあるけど、もうこれは北村有起哉の食べる系ドラマ作品にしか見えないのだ。