なぜ日ハム・吉田輝星は8割ストレート勝負でプロ初登板初勝利を手にできたのか?
ストレートは右打者の外角に徹底して集める“原点投球”。67球あったストレートのうち14球でファウルをとった。しかも広島の打者は高めのストレートにことごとく手を出した。打者が目付けした場所よりボールが伸びてきた証拠である。 金足農時代から彼のストレートは回転数と回転軸の影響でボールに異常な揚力が働き、打者にホップする錯覚を起こさせてきた。そのボールの威力はプロでも通用したのである。 80%のストレート割合は、プロでは異例の高さだが、ナチュラルに横回転する“マッスラ”を含めての80%で、その回転の違いが、逆に高度なレベルでタイミングを計るプロの打者を当惑させたのだろう。 また微妙にフォームのスピードやリリースのタイミングも変えていた。これは阪神の藤川球児が用いるテクニックだが、速球派の投手は単調になることが弱点になるため、フォームのタイミングで変化をつけてカバーするのである。吉田は1年目にして天性とも言える工夫で「狙っても打てない」ストレートを実現したのだ。 吉田自身も手ごたえをつかんでいた。 「しっかりと指にかかった真っすぐはファウルが取れたし、後半は多少コースが甘くなっても、うまく空振りが奪えました。初対戦ということもありますが、自分の真っすぐはある程度通用したのかなと思います」 試合中の広報コメントで、そう語り、試合後には改めて「今日は、しっかりと力が抜けていいボールがいっていた。空振り、ファウルもとれた。今日のボールはよかったと思います」と、自己評価として合格点を与えた。 沖縄キャンプの序盤に見た吉田は、10球に1球ほどしか指にかかったボールは来ていなかった。だが、わずか4か月ほどで、吉田は。その素質のあるボールを投げる割合をプロの1軍で通用するレベルにまで高めてきた。彼の努力に加え、目先の結果にとらわれない日ハムの育成システムが成功のバックボーンとしてあるのだろう。 プロでは変化球のキレや精密なコントロールが求められるが、やはり基本はストレートの質である。そのストレートに脅威の可能性を見せ広島相手に通用したのだから吉田の未来は明るい。