パーキングメーター「59分までは無料」を信じてはいけない…「路上駐車の裏ワザ」のウソ・ホント
■「パーメを直ちに作動させない違反」はセーフ 監視員になるためには2日間の講習を受け、テストに合格しなければならない。私も受講し、合格した。 その講習のテキスト『駐車監視員資格者必携』(東京法令出版)が手元に2冊ある。2005年6月15日初版2刷発行のものと、2021年7月15日六訂版6刷発行のものだ。どちらにも、はっきりこう書かれている。 「なお、このうち『パーキング・メーターを直ちに作動させない違反』だけは、放置車両の確認の対象となりません」 重ねてこうも書かれている。 「パーキング・メーターを直ちに作動させない違反については、放置車両の確認の対象となる違反に含まれておらず、駐車監視員がこれに確認標章を取り付けることはできません。ただし、標識で表示されている時間を超過して引き続き駐車している場合には時間超過違反が成立するので、放置車両として確認し、標章を取り付けることとなります」 ■ただし、警察官ならいつでも取り締まれる パーメの設置場所に駐車し、パーメを直ちに作動させない(60分300円といった料金を入れない)違反を、監視員は取り締まれないのである。 しかし、時間超過の違反は取り締まれる。駐車監視員から聞いたところによれば、1分でも超過したら直ちに取り締まるということはないらしい。ならば、何分超過したら取り締まるのか。そこはさすがに答えてくれなかった。一般論として、どのへんから取り締まるかは、管轄する警察署によって違ったりするそうだ。 ここまでを聞いて「60分のパーメなら、59分までは金を払わなくてもセーフ(取り締まりを受けない)なのか。ラッキー!」と思った人もいるだろう。しかし、調子に乗らないほうがいいだろうと私は思う。 駐車監視員は、取り締まりはできなくても、「これはちょっと」と思えるケースは携帯電話で警察へ報告するという。警察官が現場へ来れば、警察官は取り締まれる。 また、たとえば、ある事業所や飲食店などの前で「60分未満ならセーフ(笑)」と甘く見た違反が常習的に認められた場合、警察官は、駐車違反と「業務妨害」(刑法第233条)で逮捕するかも。違法な手段でパーメをふさぐことは業務妨害になるのだ。逮捕したら、一般予防の見地から(つまり見せしめのため)記者発表して報道させるだろう。 結局、いわゆる裏ワザで得をすることは、あんまりないんじゃないかと私は思う。交通取り締まりに限らず、人生全般についても、もしかして同じことが言えるかもしれない。 ---------- 今井 亮一(いまい・りょういち) 交通ジャーナリスト 1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。傍聴した裁判は1万1000事件を超えた(2024年6月現在)。 ----------
交通ジャーナリスト 今井 亮一