毎月勤労統計、角度を変えて見る 賃金決定は“業績”から“人手不足感”に
9日に厚生労働省から発表された3月の毎月勤労統計によると現金給与総額は前年比▲0.4%と減少しました。一見すると労働市場の改善鈍化を示す結果ですが、この統計のそのほかの項目に目を向けると、その印象は変わります。 もっとも、この統計で最も注目される現金給与総額が前年比で減少したのは、16年3月に高い伸びをしたことによるもので、さほど本質的ではありませんし、均してみれば上昇基調にありますから、賃金の上昇トレンドそのものは崩れていないとみられます。 むしろ、後述するように先行きは賃金の上昇トレンドが強まる可能性があり、この点は日銀の金融政策を見通すうえで重要なポイントになりそうです。実際、最近の宅配大手の値上げと労働者条件の見直しが象徴するよう、労働集約的なサービス業を中心に物価と賃金が互いに刺激し合う形で上昇しており、内生的なインフレ圧力が強まっている様子が窺えます。企業向けサービス価格指数と時間当たり賃金の推移はこうした構図を上手く説明しているようにみえます。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
賃金の指標とされる毎月勤労統計でわかる
毎月勤労統計は一般的に賃金の指標として注目されていますが、最近は雇用者数の増加およびその構成割合が特筆すべき動きをしています。 3月の常用雇用者数は前年比+2.4%と上昇ペースが加速。内訳をみると一般労働者(≒フルタイム)が前年比+2.6%と1992年以来の高い伸び率を記録した一方、パートタイムの伸び率が+1.8%へと減速。人手不足が深刻化するなか、雇用者数の伸び率が「一般労働者>パートタイム」となる象徴的な出来事が観測されました。企業は労働投入量(雇用者数×労働時間)の確保を急いでおり、こうした下で雇用者の構成割合は明確にトレンドが変化しています。 それに関連して雇用者に占めるパートタイム労働者の比率も低下。この数値は統計で遡れる1990年以来ほぼ一貫して上昇してきましたが、16年後半頃に頭打ち状態になった後、17年入り後はわずかながら減少に転じています。こうした構図は人手不足が続く限り、持続する可能性があるでしょう。