新型コアCPIが2カ月連続下落 それでも出口論進めたい日銀はどこを見る?
4月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)は総合CPIが100.9と前年同月比0.6%の上昇でした。コアCPI(除く生鮮食品)が100.9と同0.7%の上昇、新型コアCPI(除く生鮮食品、エネルギー)が101.0と同0.4%の上昇でした。予想比では総合とコアが0.1%下振れ、3月との比較では総合CPIが0.5%の下落、コアCPIが0.2%の下落、新型コアCPIが0.1%の下落でした。 季節要因を除去した季節調整値では、総合CPIが前月比0.4%の下落、コアCPIと新型コアCPIが共に同0.1%の下落でした。日銀が重視する新型コアCPIは2013年4月の異次元緩和発動以降で初となる2カ月連続の下落です。
人件費上昇に伴うコスト増が価格に転嫁は不発に終わる
4月は価格改定が集中する時期であることから、既往の人件費上昇に伴うコスト増が一斉に価格転嫁されることで、物価上昇率が加速するとみていたのですが、今回の結果をみる限りそうした動きは「不発」に終わったようです。 また全国版に先駆けて発表された5月の東京都区部CPIは4月から一段と減速しました。新型コアCPIの上昇率はわずか0.2%まで減速し、マイナス圏すら視野に入る領域にあります。これらデータは物価目標を“できるだけ早期”に達成したい日銀にとって悲報になったに違いありません。
ここで注意が必要なのは、日銀が事実上の政策目標に採用しているコアCPI(エネルギーが含まれている)が1%近傍の強さを維持するとみられていることです。上述のようにエネルギー以外の品目はインフレ圧力に乏しい状況にある一方で、足元の原油価格上昇がラグを伴って波及してくることから、コアCPIは粘り強さを発揮すると予想されます。4、5月のデータを見る限り、空前の人手不足状態においてもインフレ圧力はなお脆弱ですから、エネルギー以外の品目が加速度的に上昇率を高めるシナリオは、なお描きにくいと判断せざるを得ません。 しかしながら、日銀が最重要視している指標はエネルギーを含んだコアCPIです。したがって、原油価格上昇という「中身をともなわないインフレ率上昇」であるにもかかわらず、日銀がそれを根拠に出口論を進める可能性は否定できません。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。