牛伝染性リンパ腫対策 雌子牛陽性→母も検査 宮崎、21年ピークに発症減
宮崎県内にある全7の子牛市場で、ワクチンや治療法がない疾病・牛伝染性リンパ腫(BL)対策の成果が出ている。生産者とJAみやざき、行政・大学が一体で年間3万頭以上の雌子牛や母牛検査を実施。雌子牛が陽性の場合、母牛までさかのぼって検査して農場清浄化を図る。検査で陰性の子牛は市場で表示し、安全性を購買者に伝える。 【動画】宮崎県で実施されているBL対策 全国で同病の発症を確認した牛は増加傾向で22年は4334頭、23年に4493頭だった。一方、同県内では今春までに全7家畜市場で対策を開始し、21年の206頭をピークに発症牛は減少に転じ、23年は171頭となった。 対策は10年の口蹄疫(こうていえき)を契機に児湯地域で始まった。殺処分で地域から牛がいなくなった状況を逆手に、BL感染牛のない産地を目指した。JAを中心にBL検査で陰性となった牛を導入し、その後も農場での2年おきの母牛検査と、市場出荷する雌子牛の検査を続ける。高千穂地域でも14年から約2年かけて母牛の全頭検査を実施。雌の育成牛の検査を毎年続ける。
「導入先に迷惑かけない」
両地域以外の5市場では、子牛の出荷前に行う任意の血液検査で感染の有無を確認。陽性の場合には母牛までさかのぼって調べた上で感染牛を隔離するなどし、新しい牛と入れ替える。陰性の牛は、せり名簿や市場で分かるように示す。宮崎中央家畜市場では「次世代雌牛」と表示する。 同市場では雌子牛の95~96%が検査を受ける。JA宮崎中央地区本部の中森和幸畜産部長は「導入先に迷惑をかけないもと牛をつくるため産地一体で取り組んできた」と振り返る。検査は23年度、県家畜保健衛生所や宮崎大学が計3万頭以上で行った。宮崎大の検査は有料だが、安価で発症リスクが高い牛を見分けられる。 JA繁殖牛部会長会議の十河啓二会長は「県内どの市場でもBL対策をし、検査での陰性牛が分かるのは魅力。(実施率を高めるため)さらに横展開したい」と意気込む。 <ことば> 牛伝染性リンパ腫 感染牛のうち約5%が発症し、衰弱死する。ワクチンや治療法はない。血液を通して感染し、吸血昆虫などの媒介で牛舎内に広がるリスクがある。食肉処理後に発症がわかると廃棄となるため経営への影響が大きい。
日本農業新聞