中国のASEANへの影響力拡大がとまらない…日本がいま「ほんとうにすべきこと」が見えてきた
宇露戦争が勃発して以降、ロシア非難ばかりに夢中な米欧を横目に、中国はASEANをはじめとするアジア各国にも懐柔しようと精力的に動いている。日本がすべきことはアメリカ追従ではなく、身近なアジアの国々を中国に好きにさせないために手を打つことだと、中国研究者でありインドの国立大学研究フェローの中川コージ氏は『日本が勝つための経済安全保障――エコノミック・インテリジェンス』(ワニブックス刊)にて語っている。本書より一部を抜粋編集してお届けする。 【写真】中国が「福島原発の処理水放出」を問題視した「ほんとうの理由」
ASEANが日本の国益につながる
EUほどの統一意思決定構造を持ちませんが、ASEANは起源や経緯はともかく、今となっては超大国に飲み込まれたくないからこそ、個々の力では米中に及ばない国々が集まって枠組みを形成しているという側面もあります。彼らは中国の影響下に入りたくはないけれど、アメリカの影響下に飲み込まれることもよしとしていません。ここで地理的に近い日本が独自の動きを見せることが、結果的に対中牽制になり、日本の国益につながります。 日本の外交は、ASEANという地域全体を面でとらえてしまう傾向があることも是正していかなければなりません。各国ごとに成長度合い、そして経済安全保障の観点からは、中国との距離感が全く異なります。 日本は、特にASEANと地理的に近い地域大国であり、日本の約二倍およそ2.8億人の人口を有し、経済成長も著しく、イスラム教を信仰する国民が多数を占めるインドネシアとの深く幅広い関係構築は必須です。ジョコ・ウィドド現大統領およびプラボウォ・スビアント次期大統領が中国首脳らと会談を繰り返し、中国との距離を縮めていってしまっている現在、日本も積極的なインドネシアとの連帯深化が急務でしょう。 フィリピンが日米比首脳会談実現と昨今の対中領海主権紛争の激化から、中国との距離がさらに広がっていることと対照的です。ASEAN全体視点ではなく域内それぞれの国に対するメリハリある外交リソース分配の濃淡付けが重要です。