Wasabi WalletとPhoenixが米国から撤退──「ノンカストディアル」の未来は?
不確実性の高まり
暗号資産コミュニティの多くの観測筋は、フェニックスを米国から撤退させるという決定は遺憾だが、法的な不確実性を考慮すればおおむね理解できると指摘している。それに対し、ハードウェア・ウォレットを開発するフィンテック企業ブロック(Block)の創業者ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)氏は、Acinqの動きは 「完全に不必要なものだ 」と嘆いた。 「同感だ。こうあるべきではない」と、ライトニング・ラボ(Lightning Labs )CEOのエリザベス・スターク(Elizabeth Stark)氏もドーシー氏に同意した。 このニュースは、Samourai WalletのCEOであるキオンヌ・ロドリゲス(Keonne Rodriguez)氏と最高技術責任者(CTO)のウィリアム・ヒル(William Hill)氏が、無認可の送金ビジネスを運営していたとして逮捕されたという、暗号資産企業に対する直近の告発に続いてもたらされた。司法省は、Samouraiが2015年以降、20億ドル(約3140億円、1ドル157円換算)以上の違法な取引を処理し、450万ドル以上の手数料を得ていたと主張している。 法律の専門家は、ユーザーの代わりに資産を保有しないノンカストディアル・プラットフォームを追及する根拠に異議を唱えているが、世界中の当局は長年にわたり、これらのソフトウェアシステムを何らかの規制監督下に置こうとしてきた。 例えばEUは、新しいマネーロンダリング防止法の一環として、セルフホスト型暗号資産ウォレットからの暗号資産取引に1000ユーロ(約16万8000円、1ユーロ168円換算)の制限を設けることを検討している。米国当局も「ノンホスト型ウォレット」を実質的に禁止する法案の提出を検討している。このような法案は、2022年に一度食い止められている。 しかし、新たな法的措置や当局の声明によって不確実性が高まり、ウォレット開発をはじめとする多くの中核的な暗号資産に関する取り組みが、ライトニング・ノードのホスティングさえも含めて、送金法の対象になる可能性があるという見通しが浮上した。 暗号資産業界の他の多くの問題と同様に、このような懸念は裁判所の判断に委ねられる可能性が高く、これがコンセンシス(Consensys)がSECを提訴することを決めた理由のひとつでもある。