東北から復興の次なるストーリーを 独立系VCスパークルが描く戦略
なぜMBOなのか
◾️次なるストーリーを始めるためのMBO 福留:MBOを決めたのは、MAKOTOキャピタルの親会社が震災を機にできた会社だったことが理由です。震災の当時、竹井さんが行政や既存の支援機関がリーチできない会社がたくさんあることがまずいと立ち上げたものでした。その思いには共感できる部分があったものの、震災から何年も経っているのにずっと震災のことを言っていても仕方がないと思ったんです。 今、東北は人口が減少しているだけでなく、自殺率やDX推進率がワースト1位の年も多いです。ある意味で本当に夢がない地域だからこそ、やっぱり震災復興ではない次のストーリーが必要だし、希望が必要じゃないかなと思って。MAKOTOという震災復興の志をすごく持っていた会社だからこそ、我々は次のストーリーをしっかり作っていく必要があると思い、名前を変えて違う方向でやろうと考えました。 山田:自分で起業する選択もあったと思いますが、引き継ぐところにどんな意味があったのでしょうか。 福留:理由は2つあります。1つはストーリーがあること。創業者である竹井さんのストーリーを私は尊敬しています。彼が来るまで東北で頑張っていた方々がいらっしゃって、その方々との取り組みをしている会社だからこそ引き継ぎたかったんですよね。入ってから震災復興支援の受け皿としてMAKOTOがすごく頑張っていたことを聞き、改めてしっかりと継承したいなと思うようになりました。 一方で、私自身がいわゆる地方や地域での箔がなかったことも引き継いだ理由です。一発でわかってもらえるようなアイコンが欲しかったこともあり、起業であればまた最初からやり直しになってしまうとも感じていたので。 藤田:MBOしたことは正解でしたか? 福留:半々ですね。過去を継ぐということはリスペクトもあるし、過去と比べられることもある。 MAKOTOの時は東北の復興という文脈がすごく強かったんですが、スパークルとしては東北という場所を再定義しようと考えています。東北が一言で言うと、夢も希望もない状態になってしまっている。だからこそ、東北のためだけではなく、本当に地方や地域の希望になりたいし、ロールモデルを作りたいと思っています。そのために、新しい世界の経済循環を作る・簡単に言えば金回りを作ろうと活動をしているんです。 なので、地域で頑張っている地域企業の方にも積極的にアプローチをしています。まずはスタートアップに関わってほしい、スタートアップじゃなくても新規事業を一緒に作ろうとお話をしているところです。 ◾️あらゆる地域のために構造的な課題解決を 福留:スパークル1号ファンド(総額約10億円)をファンドレイズしました。正直に言うと、本当に苦労しました。 地域の人が地域を愛してくれているということは、半分YESで半分はNOだと思っているんですよね。現実として、地域から人が出ていってしまっている。経済界の人も、地域を地域の人に盛り上げてもらうよりも、東京や海外など機会がある地域に張った方が資本効率がいいと当たり前に思っています。そんな中で、やっぱり思いだけで話をしても理解されない。 「東北に何があるんですか」って、東北の人に言われるんですよ。 そこで私は、東北だけではなく全地方、全地域のためにやりたいというところに行きつきました。なぜならば、どの地域も産業形態が似ているから。東北の構造的な課題は他の地方・地域でも同じじゃないかと仮説を持ち、地域発地域着を今回のテーマにしました。