巨大地震が高齢者を襲ってくる…絶対に知っておきたい「命を守るためにやるべきこと」
何ができるのかをイメージしておく
2023年6月、5年に一度開催される国内最大級の消防や防災に関する展示会「東京国際消防防災展」には最先端の技術を駆使した防災製品が集結した。最新型の消防車両やドローン、空気呼吸器や長期保存食など計325の団体・企業が出展。4日間の総来場者数が約17万人に上ったことからも防災意識の高まりを感じることができる。 開会式で小池百合子都知事は「私たち一人ひとりが多様な切り口からのアプローチが必要であり、備えておく。この展示会がまさにその好機であり、チャンスとなることを期待している」と呼びかけたが、最新の防災技術・災害対策を知るとともに自らに何ができるのかをイメージしておくことは「有事」への備えとして極めて重要だ。 2024年の改刷で新一万円札に描かれる渋沢栄一氏は、第一国立銀行や東京ガスなど500近い企業の設立に関わった我が国における“資本主義の父”として知られる。関東大震災のときに83歳だった渋沢氏は、「首都の復興」に尽力した。 「わしのような老人は、こういうときにいささかなりとも働いてこそ、生きている申し訳がたつようなものだ」。内務大臣の後藤新平氏から命を受けた渋沢氏は、収容所や炊き出し場、情報案内所、臨時病院などの設置を進めた。 災害時は「自助」に加え、互いに救いの手を差し伸べる「共助」が被害の最小化につながる。 だが、政府の「高齢社会白書」(2022年版)によれば、2021年10月1日時点の高齢者は約3621万人に上っている。高齢化率は2065年に38.4%に達し、国民の約2.6人に一人が65歳以上となり、約3.9人に一人は75歳以上に達すると推計される。 一人暮らしの高齢者が増加し、自宅で介護生活を送る人も増え続けるだろう。そのときに少ない支え手がいかに助けを待つ人々を救うことができるのかは我が国の大きな課題になる。国や自治体の「公助」だけに頼らず、自らや大切な人を守り抜く覚悟が求められる。 2011年に発生した東日本大震災の被災地で、タクシー運転手を続ける橋本卓さん(仮名)は、毎年3月に慰霊で訪れる多くの人を海辺に運ぶ。津波で流された車の上で「助けて」と叫ぶ人、救いを求める手を忘れることはできない。 ただ、救助に向かえば自らの命が危うかったと振り返る。「目の前を通り過ぎることしかできなかったんだ」。非番で助かった人がいれば、たまたま出勤していて津波に襲われた同僚がいる。「運だよな」と漏らす寂しげな表情が忘れられない。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)