講演中に突然停電のアクシデント…何も見えない200人の客が最終的に大歓声を上げた明大教授の"機転"
優れたアイデアを生み出すにはどうすればいいのか。明治大学の齋藤孝教授は「予定調和に満足せず、変化を求める姿勢が大切だ。私自身も、むちゃぶりされたら全力で応えることをモットーにしている」という――。 【写真】ニュース番組で齋藤孝教授に「むちゃぶり」したのは、この人… ※本稿は、齋藤孝『「気づき」の快感』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。 ■イレギュラーを経験して、「気づき」につなげる 仕事は常に順調とは限らず、予想外のトラブルに見舞われる可能性があります。不測の事態に直面したときこそ、私たちには気づきの力が求められます。 トラブルに対応する気づきの力は、一朝一夕に養えるものではありません。イレギュラーな出来事を数多く経験し、それに一つひとつ対処していくのが一番の近道です。 私の経験をご紹介しましょう。以前、講演を行っている最中に、会場が停電になるというアクシデントに見舞われたことがありました。目の前が一瞬で真っ暗になり、200人もいるお客さんの姿は見えず、マイクも使うことができません。 しばらくは様子を窺っていたのですが、すぐに復旧する見込みはなさそうです。このまま大人しく待ち続けるのもつまらないと思い、大きな声でお客さんに呼びかけました。「じゃあ、これからゲームをやりましょう。この中のどなたでも結構ですので、大きな声で『1』といってください。そうしたら、誰でもいいので別の人が『2』と声を上げてください。そのまま10まで声が重ならずにスムーズにカウントできたらゴールです。どこかで声が重なってしまったら、もう一度1に戻ってやり直しです。ではスタートしますよ。どうぞ!」 ■なぜ「アイデア」を思いついたのか 一瞬の静寂があり、誰かが「1」と声を上げました。すかさず別の誰かが「2」と続けます。次に「3」という声が聞こえたと思った瞬間、まったく同じタイミングで別の場所からも「3」という声が上がりました。 会場の200人からいっせいに「あー」というため息が漏れました。実際に声を出してゲームに参加したのはたった4人ですが、がっかりするのは会場にいる全員なのです。「では、もう一度やり直しますよ」 再び、「1」「2」……とカウントしていくのですが、なかなかうまくいきません。何度目のチャレンジだったでしょうか。ついに「10」まで達成する瞬間が訪れました。暗闇の中から200人が大歓声を上げ、いつにも増して講演は盛り上がったのです。不安な時間を、楽しいひとときに変えられたという効用もありました。 数をカウントしていく協力ゲーム自体は、小学校などで行われるポピュラーな遊びですが、ここでのポイントは「暗いところでやったほうが盛り上がりそう」というアイデアを思いついたところにあります。 私がアイデアを思いついたのは、ライブの機会をたくさん経験しながら、常に気づきを求めていたからだと思います。 私は授業や講演、テレビ出演などライブで話をする機会を日常的に経験しています。ライブではトラブルや予想外の出来事がしばしば起こります。ちょっとしたイレギュラーな出来事に対応していくうちに、自然と修正力やとっさの気づき力が身についたのです。