講演中に突然停電のアクシデント…何も見えない200人の客が最終的に大歓声を上げた明大教授の"機転"
■安住紳一郎さんが教えてくれた、「予定調和からはずれる」面白さ イレギュラーな対応といえば、数年前に『情報7days ニュースキャスター』(TBS系)にコメンテーターとして出演したとき、非常に面白い経験をしました。 その日は、プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手が全豪オープンで初優勝した直後であり、日本中が優勝の快挙に盛り上がっているタイミングでした。事前に番組のスタッフから「テニスウェアとラケットを持ってきてください」といわれていたのですが、コスプレでもするのだろうと軽く考えていました。 生放送に備えていると、司会を務めている安住紳一郎さんが私に向かってこういいます。 「齋藤先生、大坂なおみさんのVTRに入る前に、サーブを打ってもらえますか?」 この提案には面食らいました。確かに私はコーチをしていたので、多少テニスの心得はあります。でも、元プロ選手というわけでもない大学教員です。私がサーブを打つ姿を生放送で全国に届ける? いったい、どういうことなのか? でも、安住さんから「今日は視聴者の皆さんがテニスに対して気持ちが熱くなっていて、絶対にラケットを振りたいと思っているはず」といわれて腹をくくりました。 ■変化をつけたほうがいい「タイミング」がある あとで聞いたところによると、安住さんは、「私にボールを打たせる、しかもバウンドするボールを打つのではなくサーブを打つ」という演出を、その場で決断したそうです。 「うまい下手よりも、思い切り打てばいい」 安住さんの言葉を信じ、私はいわれた通りにサーブを打ち込みました。すると、なんとその瞬間が3年間の放送でトップに近いくらいの高視聴率を記録したのです。 改めて「物事に旬があるとは、こういうことなんだ」と実感しました。私のサーブはあの瞬間だったからこそ生きたのであり、3日後に同じことをしたら「何をしているの?」となったはずです。 旬を逃さない感覚は、予定調和からはずれたところで効力を発揮します。 確かに、私たちには予定調和を求める心もあります。例えば、テレビドラマ『ドクターX』(テレビ朝日系)では、最後は主人公の大門未知子が難しい手術を成功させるとわかっているのに、実際に手術が成功するとやっぱり爽快感を覚えます。 一方で、人間には予定調和だけでは退屈してしまう側面もあります。予定調和に偏りすぎると、気づきの数も少なくなります。 気づきを常に意識していると、予定調和を壊し、変化をつけたほうがいいタイミングを察知できるようになります。安住さんは、予定調和に満足せず、試行錯誤しながら斬新なアイデアを生み出し続けています。彼の当意即妙な対応は、起こるべくして起きています。安住さんのように、変化を求める姿勢を持つことが大事なのです。