講演中に突然停電のアクシデント…何も見えない200人の客が最終的に大歓声を上げた明大教授の"機転"
■「大学教員が解説してよいものだろうか……」 私が受けた依頼は「『わがままボディ』という言葉の意味を解説してほしい」というものでした。「わがままボディ」という言葉には、グラビアアイドルの写真に載せるキャッチコピーで使われるイメージがあります。 「大学教員が解説してよいものだろうか……」 心に迷いが生じました。でも、迷いとは裏腹に、頭は瞬間的に働き出し、「わがままボディ」という言葉から連想する気づきを、スマホのメモ帳アプリに書き始めてしまったのです。 「『わがままボディ』には、ゆるいボディに近い響きがある」 「『わがまま』と『ボディ』は本来結びつきそうにない言葉が結びついたところに面白さがある」 「自分で『わがままボディ』という分には許される」 「いとうあさこさんが、よくいっていたような記憶がある」 メモを書き連ねているうちに、気がつけば、今さら断るという選択肢がなくなっていました。 「ここまで気づいてしまったからには、もうやるしかない」 収録では品位を保ちながら解説すればよいと考え、出演のオファーを受けることにしたのです。 ■「わがままボディ」の定義とは 番組の収録時は、「わがままボディ」という言葉がいつから使われ始めたのかなど、番組スタッフが調べた「わがままボディ史」のウンチクが明かされます。私も国語辞典の解説などを踏まえ、番組内で「わがままボディ」という言葉を学問的な視点から解説することができました。 終始楽しい雰囲気で収録が進められ、「もう終わりかな」と思っていたところ、番組から最後に追加のお願いを受けました。スケッチブックに「わがままボディ」の定義を書いてほしいというのです。そこで私は次のように定義しました。 「他(た)を気にせず、自分を思うままに表現する心身のあり方」 「心身」としたのは、体だけではなく、心のあり方も含まれるというところを伝えたかったからです。実は、私はこの定義を打ち合わせの段階から思いついていました。ディレクターの方々との会話の中で「これは体の問題だけじゃなくて、本人の心のあり方とか生き方の問題でもありますね」といった話をしていたのです。 いずれにせよ、番組出演のオファーを受けたことで、ここまで思考を深めることができました。オファーをいただくというのは課題を与えられるようなもので、本当にありがたいことなのです。 ---------- 齋藤 孝(さいとう・たかし) 明治大学文学部教授 1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『孤独を生きる』(PHP新書)、『50歳からの孤独入門』(朝日新書)、『孤独のチカラ』(新潮文庫)、『友だちってひつようなの?』(PHP研究所)、『友だちって何だろう?』(誠文堂新光社)、『リア王症候群にならない 脱!不機嫌オヤジ』(徳間書店)等がある。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導を務める。 ----------
明治大学文学部教授 齋藤 孝