強迫性障害との長い闘い“誰にも言えなかった13年間” 映画作りに込めた思いとは『every.16時特集』
専門家は―― 九州大学大学院 医学研究院・中尾智博教授 「100人に2~3人は人生のうちに強迫性障害の診断に該当する状態になっている。決して珍しくない」
■「店で支払ったはずが、盗んだのでは…」患者それぞれの深刻な症状
埼玉・所沢市で行われた強迫性障害の患者やその家族が集まる会を訪ねました。ここでしか話せない患者それぞれの深刻な症状―。
参加した男性 「何かを店で買ったときに正しく支払ったはずですが、盗んでしまったのではと思ったことがありました」 根拠なく、自分が悪いことをしたかもしれないと思ってしまう不安感。 21歳の女性は、記事やテレビで見た怖いことが自分の身に起こるかもと恐怖感に襲われるといいます。 21歳女性の母(娘が強迫性障害) 「病気になったら怖いとか呪われたら怖いとか、テレビでこういう病気がありますとか、小学生の当時は(娘は)『見たら、私もそれになるんじゃないか』」 恐怖感にさいなまれ、女性は通信制の高校も1年で退学してしまいました。 ある母親は、お風呂に12時間かかる子どもについて話しました。 患者の母親 「今では(風呂に)12時間入らないと出てこられなくて、お風呂に入らないと家の中が汚れてしまうと言って家の中で生活ができないので、車の中でほぼ丸一日過ごしている」
■高校時代、誰にも言えなかった「本当の思い」を映画に
重症化すると生活に大きな支障をきたします。治療法はさまざまで、長い時間をかけて向き合っていかなくてはなりません。野乃花さんも症状は軽くなったものの、まだ、その苦しみを抱えています。そんな中、自分の経験をもとに映画をつくろうと決意しました。 野乃花さん 「映画撮るなら絶対に高校時代のことにして」 学生時代に映像を学んでいた野乃花さんは、アルバイトをしながらクラウドファンディングで資金を募り、監督・脚本をつとめました。 野乃花さん 「(高校は)後悔が詰まった場所」 症状が一番重く出ていた高校時代、当時の写真では屈託のない笑顔の野乃花さんですが― 野乃花さん 「みんなと同じ普通の人間でいなきゃみたいな、自分を取り繕うのに必死だった。やりたいこと、なにも思うようにできなかった」 映画には、あの頃誰にも言えなかった本当の思いを込めています。 野乃花さん 「自分じゃない、強迫という存在が脅してくる。やりたくてやってるわけじゃない。そんなこと気にしなくていいと思われる、それを自分が一番わかってて。恥ずかしいことじゃなくて、そういう病気なんだってことがもっと知ってもらえたら」 先月、東京での映画の公開日を迎えました。 野乃花さん 「実感があまりわいてなくて」 強迫性障害という病気を多くの人に伝えたい、その一歩を踏み出しました。 野乃花さん 「苦しんでいる人が話しやすい環境になったらいいなと」 映画で描いた、あの頃の自分。今だから思うことがあります。
野乃花さん 「本当に思うんですよ。(高校時代の自分に)会いに行けたらどんなにいいかと。とにかく責任感に押しつぶされそうだったので、自分のせいで誰かが死んじゃうとか傷ついちゃうとか『全部放棄していいから、大丈夫だよ』って言ってあげたい。昔の自分には今言えないから、その分今苦しんでる人にそういう言葉を届けられたらな」 (11月14日『news every.』16時特集より)