京都通の建築家・竹山 聖さんが推す建築と庭は?本当は秘密にしておきたい紅葉スポットも…!
京都大学建築学科で28年間教鞭をとり、2020年には、『庭/のびやかな建築の思考』も上梓した建築家の竹山 聖さん。箱根の名旅館、強羅花壇の設計でも知られています。建築はもとより、庭にも造詣が深い竹山さんが京都を訪れるなら是非とも訪れてほしい個人的お気に入りのスポットを教えてくれました。見学も可能な名作住宅に、由緒ある寺や庭園、自身が手掛けたカフェも教えてもらいました。 【写真集】建築家・竹山 聖さんがおすすめする京都の絶対見るべき建築と庭
藤井厚二設計の聴竹居(ちょうちくきょ)/ 京都府乙訓郡大山崎町
大山崎にある、空間的環境的工夫に満ちた実験住宅です。建築家・藤井厚二は京都大学で教鞭をとりつつ、大山崎の山麓にいくつかの自邸を実験住宅として設計しました。 「聴竹居」はその最後のもので昭和の初めに完成しています。和洋のデザインを組み合わせたり、床下に風を通したり。自然のなかの瀟洒な住まいです。 JR山崎駅前には千利休の作品、妙喜庵待庵があり、国宝。こちらも必見です(竹山 聖さん)。 ※一般社団法人聴竹居倶楽部を通じて施設を公開。完全予約制にて見学も可能。
南禅寺の水路閣/京都府京都市左京区
南禅寺の奥の琵琶湖疏水(そすい、他の水源から水を引く水路)の水道橋です。琵琶湖の水を京都の街に引きこむ疏水は、さまざまな新しい風景を京都に生み出しました。蹴上のインクラインや、北白川の疏水沿いの遊歩道など。 なかでも南禅寺という京都五山の上に格付けられる寺院の山際を通過する、煉瓦づくりのこの水道橋は、おもしろい風景を生み出しています。古いものと新しいものの緊張感ある対峙と調和、とでもいうべきでしょうか。 疏水の水を利用した庭園は南禅寺の塔頭や近隣の別邸の庭などに利用されていて、見るべき庭が多いのです。なかでも小川治兵衛の作庭になる「無鄰菴(むりんあん、山縣有朋の別荘)」はその代表的なもの(竹山 聖さん)。
原 広司設計の京都駅ビル/京都府京都市下京区
原 広司設計の京都駅ビルです。1990年の国際指名コンペで、ジェームズ・スターリングやベルナール・チュミ、安藤忠雄などを破って原 広司が勝ち取ったプロジェクト。1997年竣工です。 ホテルと百貨店が入るビルですが、パブリックゾーンが大きくとられていて、ホテルや百貨店がこれ見よがしにその存在を主張していません。百貨店は巨大な階段の広場の下に収められ、ホテルもロビーラウンジが改札口前のコンコースから垣間見えるのみ。 北側の光を取り入れる大きなガラスの屋根と壁の下に、谷のような地形が形づくられていて、そこが京都を訪れる人々を迎える立体的な「門」になっています。 原 広司は同じ頃に梅田スカイビル、札幌ドームなどの巨大建築を手掛けていて、この京都駅ビルを入れて3部作とも見ることができるでしょう。京都駅が「谷」、梅田スカイビルが「空」、札幌ドームは「大地」と語らう建築だといっていいと思います。ちなみに原 広司は私の東大大学院時代の師匠です(竹山 聖さん)。