故・平尾氏との約束。名門神戸製鋼ラグビー18季ぶり復活日本一の理由とは
入部2年目のアシュリークーパーも「私もこうしたテーマづくりが大事だと思っていた」とし、こう続けた。 「ウェインは、スチールワーカーというテーマを私たちに授けてくれた。自分たちは、鉄鋼マンの方々を代表してラグビーをしているという意味を持ちました。製品には直接の関係がないとしても、自分たちのプレーは製鉄所を代表しているものだという意識でいます。こうしたテーマ、イメージは、チーム作りにパワーを与えます。自分たちの存在以上のものに紐づけられることで、自分たちはより大きく成長します」 ニュージーランド代表のアシスタントコーチとしてワールドカップ2連覇を果たしたスミスは、定期的に来日してデイブ・ディロン・ヘッドコーチらを支援。試合に向けた1週間の練習計画を選手に立てさせるなど、個々の主体性も促していた。巨大戦力が一枚岩となったことで、順位決定トーナメント突入後のラスト2戦はほぼ完璧な内容で戦い終えた。 スミス本人は、ただただ「愛」を強調した。 「ラグビーはスポーツですが、することを愛さないとうまくいきません。私は選手全員のすることを愛していますし、会社を愛しています。そうして結果がついてきています」 名伯楽とともに注目されたのは、ダン・カーターだ。 入団の理由にスミスの存在を挙げていたカーターは、ニュージーランド代表112キャップを有するトップスター。7月に来日して9月に初陣を飾るや、相手に身体の正面を向けてパスを投げる、常に空いたスペースを探すといったスタンドオフとしての教科書通りのプレーを遂行した。 日本代表としてワールドカップ2度出場の日和佐篤は、サントリー時代から元オーストラリア代表のジョージ・グレーガンらワールドクラスとプレーしてきた。新天地で出会ったカーターやアシュリークーパーらの影響力を聞かれ、試合中の出来事を振り返る。 「どの試合でもよくない時間帯はあると思うのですが、そういう時間帯にいい方向性を示してくれていたのが大きいと思います。皆をしっかりまとめて、いい方向に行かせるように話してくれていました」 カーターはグラウンド外でも人格者として鳴らし、日本人選手の居残り練習もサポートしていた。世界の顔がチームに寄り添い明確な指針を示すのだから、心強さは増すばかりだ。 決勝戦後のカーターは、「これは神戸製鋼にとって特別な試合でした。前回の優勝から長い時間が空いていたので、本当に嬉しく思っています」。共同会見での第一声で同僚選手の感情について話すあたりに、信頼されるわけをにじませた。 「今回の試合の週へ入ってからは、色々な感情が湧きました。長く神戸にいる橋本さん、谷口到さん(11年目)、前川さんには『神戸製鋼で優勝したい』という思いが強く、私は彼らの気持ちを背負ってプレーしました。彼らにとって優勝がどういう意味を持つのかを知ってプレーでき、よかったと思います。試合後のロッカールームは笑顔でいっぱいでした。今日のパフォーマンスを誇りに思っています」