教育の情報化の現状と課題
GIGAスクールの効果は現れつつも道半ば
続いて、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の2022年の結果をひもときつつ、日本の生徒の学力について紹介した。PISAは3年おきに実施されており、コロナ禍のため1年空いた。次は2025年の予定なので、2022年が最新の結果となる。2018年はCBT(Computer Based Testing)の導入により点数が下がったが、2022年は巻き返した。 しかし、PISA2022で用意された「再び学校が長期に休校となった場合、自律的な学習ができるか」という質問に対しては、自信があると答えた生徒は少なく、OECD加盟国の37カ国中、34位にとどまった。「学ぶ理由が分からないのに点数が高いという海外から見て不思議な国になっている」と堀田氏は警鐘を鳴らす。「働き方が時代で変わるのに自分で学ぶ力がない。今まではベテラン教員の力によるところが大きかったが、教員が若年化しつつある現在、授業の形を変えていかねばならない」と力説した。
新しい中心概念「自己調整学習」
新しい授業のやり方を進めていく指針として、堀田氏は「自己調整学習」を挙げた。「Self-Regulated Learning」の訳で、児童・生徒が自分で制約や規律を作り、学習していくという欧米で先行している考え方だ。「最初から大胆に決めるのは難しいので、最初は選択肢を与えるなどの教員の補助が必要だが、徐々に委ねていけばいい」と堀田氏は語る。こうした自律的な学び手としての勉強法は、小学校の高学年の段階である程度身に付いている必要があると堀田氏は考える。「中学校の先生は一生懸命やってくれるけど、本当に忙しいので小学校ほど細かくは教えられない。そんな中で生徒は自分で考えて頑張らなくてはいけない」(同氏)。 新たに求められる学びの力を示す例として紹介されたのは2024年度(令和6年度)の全国学力・学習状況調査だ。小学6年生の国語の問題は、第1問から届いたメールの内容について読解を求める内容だった。中学3年の数学の問題では、車型ロボットのプログラム作成に関する問題が出題された。この調査では学校の授業でICT機器が活用されているかを尋ねるアンケートも児童・生徒に対して行っており、ICTの活用度や平均正答率の相関が導き出せる。その結果、「主体的・対話的で深い学び」による授業改善を行っている学校ほど、ICT利用率や平均正答率が高いことが分かったという。