【被団協にノーベル平和賞授与】神奈川の被爆者、核兵器廃絶へ思いを新たに
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞が授与された10日、神奈川県内でも被爆者や市民らが受賞を喜び合い、核兵器廃絶への思いを新たにした。 【写真で見る】被団協のノーベル平和賞受賞を祝い、スタンディング活動をする市民有志=10日、鎌倉駅前 被団協に属する県組織「県原爆被災者の会」副会長の網崎万喜男さん(84)=鎌倉市=と事務局長の東勝広さん(82)=厚木市=は同日夜、同会が大船観音寺(鎌倉市)境内に建立した原爆犠牲者慰霊碑を訪れ、平和を願って静かに手を合わせた。 「被爆者たちのこれまでの活動が認められた。感激しています」 そうほほ笑む網崎さんは4歳の時、広島市で被爆。爆心地から5キロほど離れた防空壕(ごう)の外から、空が光るのを見たという。 被爆者らは2016年から核兵器廃絶国際署名の活動を世界的に進め、翌17年の国連での核兵器禁止条約採択につなげた。 だが、日本政府は同条約に賛成せず、批准もしていない。網崎さんは「唯一の被爆国として批准は必要。亡くなった人たちの分まで自分たちが頑張らないといけない」と決意を新たにする。 「ロシアのプーチン大統領が核兵器という言葉を口に出したことで、みんな恐怖を再認識した。『核の脅威について改めて考えたい』との思いが世界に広がる中、僕ら被爆者たちの動きも知っていただけた」 そう喜ぶ東さんは一方で、活動継続の難しさも感じている。 同会は、1956年の被団協設立と同時期に県内の仲間づくりを始め、10年後の66年に結成された。メンバーの高齢化は進み、多くの先輩たちが鬼籍に入った。「被爆者の証言を被爆2世がどう引き継いでいくか、なかなか難しい。今後のことを考えないといけない」 被爆者たちの切実な思いに応え、歩みを共にしようとする市民有志らもいる。 任意団体「みんなで鎌倉平和デー実行委員会」は授賞式に合わせ、日本政府に同条約の批准を求める署名活動を同日昼、鎌倉駅前で実施。「核兵器はいらないという声を鎌倉からも上げよう」などと呼びかけた。 実行委の林彰子さん(62)は言葉に力を込めた。「今回の受賞をきっかけに、『核兵器を決して使用してはいけない』ということが多くの人に伝わってほしい」
神奈川新聞社