但馬地域のクマ目撃・痕跡件数

　春以降、兵庫県但馬地域で出没が相次いでいるツキノワグマについて、県森林動物研究センター（兵庫県丹波市）は「今秋は人里に大量出没する恐れがある」との予測を発表した。クマの主要な餌となるドングリ類（堅果類）が県内で14年ぶりの大凶作となっているためで、但馬県民局や各市町は警戒を強め、注意を呼びかけている。（熊谷暢聡）

　同センターはクマの出没予測のため、コナラ、ブナ、ミズナラの実の豊凶調査を県内各地で実施しているが、凶作の年には、餌を求めて人里への出没が増える傾向にあるという。

　但馬地域では83か所ある調査地点のうち、7割近くでほぼ結実がなかった。残りの調査地点も「ほとんどの木で少量以下」が25か所。「多くの木で並み」との結果はわずか2か所にすぎなかった。

　原因ははっきりしていないが、同センターは「（凶作が）広範囲にわたることを考えると、気象条件が影響しているのではないか」との見方を示す。

　ドングリ類の大凶作は2010年以来で、同年度の但馬地域におけるクマの目撃・痕跡数は前年度の10倍以上になる1328件に上り、過去20年間で最多となっている。今秋も、過去5年平均の2～4倍になると予測している。

　クマの目撃・痕跡件数は今年4月以降、350件（8月末時点）で、過去5年平均に比べて北但が1・8倍、南但が2・1倍。中山間地域だけでなく、市街地の近辺でも目撃されている。人身事故の恐れがある場合などには 檻おり を設置して捕獲を実施し、9月26日現在で67頭を捕獲した。

　大量出没の可能性を受け、但馬県民局は9月、但馬5市町と県の関係部署による「クマ対策連絡会議」を発足。住民への注意喚起を徹底するとともに、捕獲檻を市町間で融通し合ったり、鳥獣保護法に基づく県の捕獲許可について迅速化を確認したりと対応を強化する。

　センターの藤木大介・主任研究員は「秋になる前から出没が多く、冬眠まで続くだろう」と推測。「クマは暗くなると、柿の木などを目指して集落に出没し、明け方に帰っていく。集落内での人身事故は出合い頭が多く、早朝や夕方の時間帯の散歩には気をつけてほしい」と話している。