寒暖差からくる不調の改善、風邪予防、脳卒中対策に、冬の水分補給が大切な理由「1日1500mlは必要と心得て」〈医師が指南〉
夏は暑いうえに、熱中症対策もふまえて水分補給を心がけますが、冬は気温が低いため、それほど意識しない人も多いのでは。けれど、実は冬には冬の、風邪予防や寒暖差からくる不調を防ぐために、しっかり水分を摂る必要性がある。冬の水分補給のメリットについて、済生会横浜市東部病院 患者支援センター長の谷口英喜先生が解説する。 【画像】冬の水分不足を引き起こす原因となる意外なもの
冬こそ意識的に水分を摂らないと脱水状態に
汗をかかない冬は、体の水分を失っていることに気づきにくく喉も渇きにくいので、水分補給を怠ると脱水を引き起こす場合があります。 人間はだいたい1日に約2.5Lの水分を失っています。その内訳は尿や便、汗、不感蒸泄(ふかんじょせつ)の4つです。中でも無意識に皮膚や粘膜、呼気から水分が失われる不感蒸泄は、安静時でも1日900ml、体から排泄されています。これは夏でも冬でも変わりません。 夏は暑いし、汗もかくので、意識的に水分補給しますが、冬は夏と同じように水分が体から排泄されているのに、水分不足に気づかないまま、過ごしている場合が多いのです。 また、冬野菜などは水分量が夏に比べて少ない根菜類が多く食卓に並ぶため、食べ物から摂取する水分もおのずと少なくなります。 さらに環境面では、暖房がきいた部屋で過ごすことが多くなるので、室内が乾燥し、湿度が下がるため、それだけ皮膚を通して出ていく水分量は増えることになります。 だからこそ冬は、意識的に水分を摂ることが大切なのです。
水分補給は脳卒中や風邪予防になる
水分補給をしっかりすることは、実は風邪予防にも効果的です。 ウイルスが体の中に入ってこないように、喉、鼻、肺の気管の粘膜にはさまざまな防御機能が働いています。ですが、そこが乾燥していると防御機能はうまく働きません。そして、それぞれの粘膜を潤すためには体液が必要のため、水分をしっかり摂る必要があるのです。 さらに、ウイルスが体に入った場合には、撃退するために白血球が働きます。白血球は骨髄で作られますが、しっかり機能させるには骨髄に栄養と酸素が行き渡ることが大切です。 栄養と酸素を運ぶのは体液であるため、体が水分不足だと白血球が作りにくくなる場合もあるということです。 このように、水分をしっかり摂ることで風邪のウイルスを防御し、またウイルスが侵入したときには撃退するためにも重要なのです。 風邪をひいたら、水分を摂りましょうと医者から言われる理由のひとつはそのためです。 また、寒くなると血圧が上昇することもあり、冬は脳卒中や心筋梗塞の発症が増える傾向にあります。 脳卒中や心筋梗塞の原因はおもに動脈硬化ですが、水分不足だと血液の粘度が上がり、ドロドロした状態になりやすくなります。 そうなると、血管が詰まりやすくなり、動脈硬化を引き起こし心筋梗塞や脳卒中を発症する可能性が高くなるのです。 日ごろから血圧が高めの人や、生活習慣病が気になる人は、なおさら冬でもしっかり水分補給するようにしましょう。