誰でも気楽に、新たな音楽に出逢いに来て 『浅野祥 三味線 “響”』
音楽をより深め、自分だけの表現を探していきたい
――和楽器というレッテルを貼られて悔しい思いをしたこともあると仰っていましたが、活動を続ける中でご自身や周囲の変化はありますか? たくさんありますね。デビュー当時は三味線を演奏している若者がほとんどいませんでしたが、今は数えきれないほどいます。恐らく、僕の先輩奏者にあたる上妻(宏光)さんや吉田兄弟さんなどが堅苦しいイメージを崩してくれ、そこに和楽器バンドさんなど、見ても楽しめるエンターテインメントが出てきたおかげ。 デビュー当時はジャズをやろうがロックをやろうが「三味線なのにできてすごいね」で終わってしまって発展しなかったんです。今はできるのがスタンダードになったことで、この先を考えられるようになりました。例えば、ジャズのスケールを弾けるようになろうとか、譜面のない民謡の演奏家が五線譜を渡されてその場で弾けるようになろうとか。 音楽的な会話が当たり前にできるような努力をしてきたことで、NYでジャズの巨匠とコラボしたときも、1ミュージシャンとして接してもらえたのが嬉しかったです。そういったコンサートを続け、10代・20代・30代のお客様も増えてきた。変化し続けている実感がありますね。 ――そんな中で、20周年に向けて挑戦したいことや構想を教えてください。 今まで、ジャズミュージシャンやクラシックとのコラボとなったら、僕がそのフィールドに乗り込んでいました。ここからはこちらのフィールドに引き入れたいですね。自分が培ってきた音楽性の上で、様々なアンサンブルを発信していこうと思い、準備を進めています。 20周年に向けて一番やりたいのはワールドツアーです。音楽のすごくディープなところを感じたい・探したいという思いがあって。去年、ペルーに行って、アンデスの皆さんが「コンドルが飛んでいく」をケーナで演奏しているのを聞きました。僕らが音楽の教科書で知っているものと違う、すごく独特なリズムでしたが、それが150年前、津軽三味線が誕生した当時の「津軽じょんから節」と同じリズムだったんです。 線では繋がっていないけど、音楽って点と点で繋がっているとこれまでの経験で感じる。三味線を持って世界を旅することで音楽の深いところを突き詰めていきたいですね。自分が三味線を弾けなくなって絶える時に「浅野祥の三味線ってこうだったよね」というものを作り上げるために、いろいろなものを吸収したい。そのために世界を巡りたいと強く思っています。 ――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。 堅苦しいコンサートではないので、本当に気楽に聞きにきてください。クラシックとジャズと津軽三味線が一緒に何かを作り上げる、それぞれが様々な音楽に触れてきた名プレイヤーたちと一緒に作り上げる機会を僕自身もすごく楽しみにしています。会場が一つになれるような熱い演奏をします。ぜひ皆さんも、どういった音楽が浜離宮で繰り広げられるのか楽しみに来ていただきたいと思います。 取材・文:吉田沙奈 <公演情報> 浅野祥 三味線 “響” 公演日程:2024年9月7日(土) 13:30開場/14:00開演 会場:浜離宮朝日ホール