「これ以上やっても、過去の自分の焼き直し…」十年前の気づきがもたらした、杉山清貴の新しい可能性
街から海へ
第9位「プリズム・レインに包まれて」、第14位「風の一秒」、第15位「LIVIN' IN A PARADISE」と、平成元年から平成5年までのシングル曲がTOP10前後に並んだ。いずれも、オメガトライブから続く、ひと夏ごとに新しい恋をする軟派(? )なイメージではなく、どこか男くさい雰囲気が漂う。なお、「プリズム・レインに包まれて」はオリコン最高12位で、オリコンTOP10入り記録が「7作」で途絶えた。これは、本作が収録アルバムを同時発売するなど、シングルに特化しないプロモーションだったためであり、アルバム・ヒットは継続していたことも注釈しておきたい。 「『プリズム・レインに包まれて』は、意外に上位ですね。(シングルとアルバム同時という)リリースに関しては、自分は全く意見がなくお任せにしていました。それと同じアルバムからは、『ROCK ISLANDS』がそこそこ人気(第20位)なんですね。 この2曲は、ソロになって完全に街から海へと照準を変え始めたころです。作詞の田口俊さんは、世界中の海に浸かったことがあるほど、根っからのダイバーなんですよ。ふだんは女性アイドルに書くことの多い彼が、“海の歌詞を書きたい! 杉山君しか書かせてくれる人がいないんだよ~”って言うので、僕も、どうぞ、どうぞってお願いして。だから、ここで“チャラさ”がなくなったとすれば、それは田口さんのせいですね(笑)」 MIZUNO SUPER STAR CMソングの「風の一秒」や、アサヒ生ビール「Z」CMソングの「LIVIN’ IN A PARADISE」では、ロック色がいっそう強くなっている。 「タイアップの要請もあって、『風の一秒』は疾走感のあるものを、『LIVIN’ IN A PARADISE』の方は、ビーチ・ボーイズをイメージしたんですよ。この頃はずっと憧れていた(アメリカの有名な音楽プロデューサーである)トム・キーンと共同制作をしていて、89年に初めてロサンゼルスに行き、翌年から直接やり取りしていました。やっぱり、自分が聴いて育ったミュージシャンたちと自分の曲が作れるなんて最高じゃん! と思って、完全にその方向を追求していました。 その次の年には、ボディボードを持ってハワイに移住し、波乗りメインで、時々曲を作るというスタイルでした。もちろん、プロなので売らなくてはいけないのですが、自分の世界観や生き様をどうやって音楽に反映させていけばいいか、日々挑戦していましたね」