「日本人の海外旅行が急に増えることは、しばらくない」円安続くGW…出国者数がコロナ前の半分に激減
’24年GWは最大10連休、しかし円安が止まらない……
新型コロナ後、急速に増加する訪日(インバウンド)需要。その一方で、日本人の海外旅行はいまだ伸び悩んだまま、出国者の数はコロナ前の半数以下と、回復にほど遠い状況が続く。その主な要因として、1ドル=150円を超える円安、航空券の運賃高止まり、現地の物価高などが挙げられる。 上級会員到達には約1200万円の買い物が必要!? 相次ぐ「マイル制度改悪」で〝マイラー消滅〟か… それでも、もうすぐ大型連休(ゴールデンウィーク、GW)の時期がやってくる。’24年は4月27日(土)から5月6日(月)で、中日の平日4月30日(火)~5月2日(木)を休めば、10連休となる。 大手旅行代理店などは先日、GWの旅行予約動向を発表。今、海外旅行で最も人気の行き先はどこか、また旅費を抑えて行けるおすすめの国・地域、さらに今後の見通しなどについて旅行業界の専門家に話を聞いた。 ◆大手旅行代理店のGW見通し、海外旅行人気ランキングと分析 JTBは4月初め、GWの旅行動向見通しを発表した。各種経済動向やJTBグループが実施したアンケート調査などからの推計で、海外旅行は旅行者数が52万人(対前年167.7%)、平均費用は26万9000円(対前年104.7%)、旅行消費額が1399億円(対前年175.6%)とした。 この結果に関し、「旅行者数は、新型コロナウイルス感染症流行前の8~9割程度まで回復(10連休だった’19年を除く)。前年の水際対策終了がGW間際の発表で海外旅行を断念した人が一定数いたと想定、その反動が見込まれる」「平均旅行費用(単価)は、円安や物価高の影響により上昇」「旅行意欲は高めだが、旅行費用の高騰を受け、行先は近場が多く、特にアジアの人気が高い」などと分析している。 行き先のトップ5は、①韓国、②東南アジア、③台湾、④アメリカ本土・カナダ、⑤その他。コロナ前の’19年に2位のヨーロッパ、3位のハワイは順位を落としている。 また、HISは、自社のツアーや航空券などを申し込んだ人を対象に旅行予約動向を発表。予約者数における前年同期比は123.2%、コロナ前の’18年同期比では53.3%とのこと。平均単価は前年同期比98.5%の20万4900円(’18年同期比147.7%)。予約者数のランキングは、①ソウル、②台北、③ホノルル、④バンコク、⑤プサン(釜山)となった。 阪急交通社も、GWの予約状況から、海外旅行・国内旅行の旅行動向を先日まとめて発表した。その結果、①ヨーロッパ、②台湾、③韓国となり、「韓国をはじめとしたアジアが、昨年から需要が高まっており、ゴールデンウィークもその傾向が顕著」とした一方で、「日数が長く旅行代金も相応な金額となるヨーロッパも、リピーターを中心に長い休暇を取得しやすいゴールデンウィークは人気」と分析する。 一方、外資系OTA大手のエクスペディア・ジャパンが発表したGWの人気海外旅行先ランキングが以下。実際の予約数でなく、GW時期における検索数でのランキングである。 その検索数から、今年のGWは海外需要が昨年比136%と増加傾向に。①ソウル、②台北、③バンコク、④オアフ島(ホノルル)、⑤香港が上位にランクインし、アジアが10位中で6ヵ所も入っている。 「日本から近場」という傾向は、JTBやHISと同様。ロサンゼルスは野球のメジャーリーグ、パリは今夏にオリンピックが開催される影響と見られる。 ◆実はまだある、近場アジアの意外に「お得な旅行先」トップ8 いずれのランキングからも、今年のGWは日本から近い韓国や台湾が人気なのがうかがえる。近場だと航空券が安く抑えられる。昨今の円安と現地の物価高でコロナ前より割高感はあるものの、欧米より旅費の面で負担が少ないのが大きい。 一方、その他の海外にも、費用を抑えて行ける渡航先が少なからずある。 外資系OTA大手のagoda(アゴダ)は先日、4月から5月にかけ、「平均宿泊料金が最もリーズナブルな旅行先」を発表した。その上位8都市が、①ウドンタニ(タイ)、②スラバヤ(インドネシア)、③フエ(ベトナム)、④クチン(マレーシア)、⑤イロイロ(フィリピン)、⑥ベンガルール(インド)、⑦成田市(日本)、⑧高雄(台湾)だった。 例えば、ウドンタニは、ラオスとの国境近くにあるイサーン地方四大都市の1つであり、タイでは珍しい先史時代の遺跡が数多く残る。スラバヤはインドネシア第2の都市で、東南アジアトップクラスの動物園があるほか、ローカルな市場や伝統料理なども魅力だ。ベトナム・フエはグエン王朝の首都として栄えた古都。旧市街の王宮や寺院がユネスコ世界文化遺産に登録され、フォーン川のボートクルーズも人気が高い。インド・ベンガルールや台湾・高雄は、日本からの直行便も就航する都市だ。 それぞれの国・地域で、首都を避けて地方へ足を伸ばすと、ホテル代をはじめ物価が安いケースは多々ある。宿泊費を抑えられると、旅費全体の節約にもつながる。ベトナムやインドネシアなどは円安の影響でコロナ前より現地の物価は少し上がったものの、日本よりまだ割安感がある。 ◆日本人の海外旅行、国のデータが示す厳しい現実 出入国在留管理庁が発表した速報値によると、日本人出国者数は、コロナ前の’19(令和元)年が’08万669人で、直近の’23(令和5)年が962万4152人。つまり、コロナ前の半分以下にとどまっている。 旅券(パスポート)保有率も、外務省の資料によると、’23年末時点で有効旅券数は2064万4745冊で、全国民の17.0%しかいない。’19年が23.8%だったのと比べ、コロナ禍をはさみ、ずっと下がり続けている。 日本のパスポートがあると渡航先で観光ビザなどが不要で入国できる国が多く、国際的にも「世界最強のパスポート」と言われて久しい。だが、円安が進み、現地の物価は上がり、滞在費はコロナ前よりはるかに増大している。パスポートの更新料も10年旅券で1万6000円と決して安くないこともあり、「しばらく海外旅行は様子見する」という人々も実際少なからずいるのは事実だ。 ◆旅行業界専門紙の編集長「しばらく厳しい、でも関心は高い」 旅行会社の現場では、海外旅行自体の問い合わせは増えており、関心は依然高いという。観光・旅行専門紙『トラベルニュースat』の富本一幸編集長いわく、「今の行き先はアジアがメイン。ただ、燃油サーチャージが航空券代金より高いなど、ツアー代金が以前より割高なうえ、それらをお客様に説明するのが心苦しいと、よく聞きます」とのこと。 今年のGW、さらに今後に関しては「市場的に海外旅行はまだまだ厳しく、大きな波は来ていません。日本人の海外旅行が急に増えることは、昨今の状況からもしばらくないでしょう。ただ長期的には、ゆるやかに戻ると考える旅行会社は多いです」と話す。 さらに、旅行会社のカウンターへ足を運ぶ客層が、コロナ前の相談メインでなく、あらかじめ調べたうえで来店してその場でツアーや航空会社、ホテルなどを即決するケースも増えているという。日本人の海外旅行、その旅行スタイルそのものも変化してきているようだ。 取材・文:Aki Shikama / シカマアキ
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