【江戸ことば その1】江戸時代3万語所収の辞典を全部読んでみた!「逆さ言葉」ににじむ当時の文化
■「江戸ことば」の4つの魅力 神戸:何が面白いかというと「語源がわかる」ことが多いんです。 下田:いま私達が使っている言葉の語源? 神戸:はい。それから、「語感が面白い」というかな。例えば、妻のことを「嬶左衛門」と呼んだりする。 下田:かかあざえもん?なんか、ふざけてるね(笑) 神戸:そう、ふざけてるんですよ。「うちの嬶左衛門がよ……」とか、多分そういうふうに使っていたのでしょう。「怖い怖い怖い」って。 下田:なるほど、そういうこととか。 神戸:それから「江戸の文化が感じられる」ものも多いんです。「塩絶ち」という言葉があります。神仏に祈願している間は塩分を摂ることを避ける。「塩絶ちして、家族の無事を祈る」なんていう言葉から、文化がわかる。あと、「色っぽい言葉」もいっぱいあります。 ■「ばそ」「せるき」とは? 神戸:今日紹介したいのは、まずこの言葉です。「ばそ」。 下田:ばそ?……そば? 神戸:そうです!「ばそでも食べ行くか?」。 下田:え、ちょっと待って。よく、平成とか昭和のプロデューサーが「お寿司屋さんに行こう」っていう時、「ねえ○○ちゃん、シースー行かない?」っていう、本当にチャラチャラした……。 神戸:業界人ね。「ばそ食べいこうかい?」って。 下田:本当? 神戸:こんなのもあります。「せるきでも吸うか」。 下田:せるき……キセル? 神戸:そう、キセル。 下田:逆さ言葉をやってたんだ! 神戸:上下を入れ替えることを「天地替え」と言いました。一番有名なのはこれかな。「ぐりはま」。 下田:ぐりはまってちょっと……ハマグリ? 神戸:そうそう、結構、落語とかに出てきますよ。「ぐりはまでも食いねえ!」 下田:それが粋だったの? 神戸:軽い日常言葉として、職人さんも多い町だったし。業界だけで使われる言葉「隠語」もあるんですよ。 神戸:例えば「きす」。 下田:キッス?きすは「好き」? 神戸:うん、好き。これは香具師(やし)とか、その筋の人たちとかがいるじゃないですか。そういう人たちの中で言っていたのは「好き」=酒のこと。「酒を買いに行こうか」は、「キスを引くか」。 下田:へえ……。 神戸:その業界の人にしか通用しない。一般の人には通用しないけど、ちゃんと言葉として記録されている。その業界の人たちにとっては「きす」と言えば「酒」を指すんです。