米、拷問に関与したシリア元高官を起訴 素性隠して米国に移住
米西部カリフォルニア州の連邦大陪審は12日、シリアのアサド前政権下で収容者の拷問に関与したとして、元ダマスカス中央刑務所長のサミール・ウスマン・シェイク被告(72)を拷問などの罪で起訴した。シェイク被告は反体制派の弾圧を担う情報機関に所属していたが、2020年に素性を偽って米国に移住していた。 【写真まとめ】政権崩壊後、開放されたシリア軍の拘禁施設 米司法省などによると、シェイク被告は05~08年に刑務所長を務め、政治囚らに対する拷問に関与した。懲罰棟では、天井からぶら下げて殴打したり、体を折り曲げて前屈した状態で固定する「空飛ぶカーペット」という異名の拷問器具を使用したりした。時には背骨を折るほどの重傷を負わせていたという。 シェイク被告は情報機関と同時に独裁与党「バース党」に所属。アサド前大統領の弟で、軍の実権を握っていたマーヘル・アサド氏の側近だった。11年にアサド政権が民主化要求運動「アラブの春」を武力弾圧し、内戦に突入。シェイク被告は11年7月に東部デリゾール県の知事に任命された。 約1年間知事を務める間、同県でも政権側がデモを弾圧した。一方、妻は13年に米国の市民権(国籍)を取得。17年からシェイク被告の米国移住の手続きを始め、18年に隣国ヨルダンの米国大使館で素性を隠してビザを申請した。 シェイク被告は20年に米国に入国して永住権を取得し、23年には市民権(国籍)取得も申請。しかし、バース党や情報機関に所属していたことが発覚し、今年8月に移民当局への虚偽申請などの罪で連邦地裁に起訴されていた。シェイク被告は米国に移住後もシリアの隣国レバノンをたびたび訪問しており、前政権と関係を維持していた可能性もある。【ワシントン秋山信一】