甲子園使用料もゼロ…夢の高校野球交流戦実現の裏に阪神のバックアップ
まだ、この段階では緊急事態宣言につながるほどの感染拡大が予期されておらず、5月の連休には収束するのでは?という楽観的な見方もあったため、4月末から5月のゴールデンウイーク期間を利用して、今回と同じく各校1試合ずつの交流戦の実施が検討され、非公式ではあるが、阪神サイドに「センバツの救済措置としての交流戦を考えている。ゴールデンウイーク期間中に甲子園を使うことはできないか」との打診がされていたのだ。 だが、延期されていたプロ野球は4月24日に開幕予定で、4月29日から5月3日までは甲子園での試合の日程が入っていた。もし、ここで甲子園を明け渡すとすれば、京セラドームを使用するしかないが、ちょうど同時期にオリックスの本拠地ゲームが京セラドームで入っていて、この話は非公式段階で流れた。だが、高野連の救済プランを一度聞かされていた阪神サイドにしてみれば、感染拡大が落ち着き、政府の制限解除の方針が明らかになれば、8月にも再度、同じ救済プランがあるかもしれないとの想定ができたのである。 加えて阪神には春夏の甲子園大会とは切っても切れない縁がある。甲子園球場は、十干十二支の最初の年である「甲子年」にあたる1924年(大正13年)8月に完成、その年の第10回全国中等学校優勝野球大会から使用された。夏の甲子園のスタートである。1915年(大正4年)に始まった第1回大会からは、豊中グラウンドや鳴尾運動場が使用されていたが、人気が沸騰して観客を収容しきれなくなり、ファンがグラウンドになだれこむ事件まで起きていた。大会の主催者側が5万人規模の球場建設を阪神側に求め、阪神も甲子園の周辺をスポーツ施設、遊園地、動物園などを集めた総合レジャーランドにする構想が進めていたため、甲子園球場の建設を決めた。タイガースのためではなく高校野球のために甲子園球場が誕生したという歴史的な経緯があるのだ。 そのため阪神は使用料なしでも総合レジャー施設のひとつとして話題を集め、阪神電車を利用してもらえれば、十分に元を取れると判断、両者の思惑が一致して”高校野球”に関しては使用料ゼロでスタートした。その”契約”は96年が経過した今でも継続され春夏の甲子園大会の甲子園の使用料はゼロである。