マルク・マルケス、来季のドゥカティ・ワークス入り確実! 急転直下の移籍報道の舞台裏…ドゥカティは最強体制へ
イタリアGPが終わった翌日の6月3日、雨の降るムジェロで今季2回目の公式テストが行われた。多くの選手がウエットの路面状況を見るためにコースインしたが、以後、ウエットでしっかりテストを続ける選手はそれほど多くなかった。多くのチーム、ライダーが準備したテストメニューはドライ想定だったからで、多くの関係者が何も成果を得られないまま、ただ時間が過ぎていくという1日となった。 【最新写真満載】“乗れてる感”あふれる今季のマルケスと全盛時を思わせる明るいパフォーマンス、珍しい短髪とスペシャルカラーのヘルメット、マルケスを好きすぎて泣いちゃう少年などを写真で見る そんな中、午後になってスペインとイタリアのメディアが報じた「マルク・マルケス 来季はドゥカティ・ワークス入り」というニュースは、瞬く間に世界を駆け巡った。そして、その直後にホルヘ・マルティンの来季のアプリリア入りが正式に発表され、茫洋とした1日が関係者もファンもびっくりの1日に様変わりした。 このふたつの出来事は密接に関係している。 前提として、2連覇を達成したドゥカティのエース、フランチェスコ・バニャイアの2026年までの契約更新がすでに確定。一方、バニャイアのチームメートのエネア・バスティアニーニは思ったような成績を残せず今季で契約終了で、もうひとりのライダーが誰になるのかに注目が集まっていたという状況があった。 その有力候補はふたり。ひとりはドゥカティのナンバー2チームであるプラマック・レーシングで2年連続してバニャイアとチャンピオン争いを繰り広げ、現在総合首位のホルヘ・マルティン。もうひとりは今年ホンダからドゥカティのサテライトチーム、グレッシーニ・レーシングに移籍し、チャンピオン争いに復活したマルク・マルケスである。
マルケス、ついに最新マシンを獲得
おそらく水面下では、それぞれのマネージャーとドゥカティとの交渉が続いていたのだろう。この数戦はどっちがドゥカティ・ワークスなのかという話題で持ちきりだったが、イタリアGPのウイーク中にいろんなことが一気に動き始め、週明けのマルケス・ドゥカティ入り確実報道とマルティンのアプリリア入りの発表につながったようだ。 マルケスの来季に向けての強い希望は最新型のワークスマシンに乗ることだった。ドゥカティ陣営でその恩恵を得られるのは、ドゥカティ・ワークスとプラマックに2台ずつ、そしてVR46に1台の計5台のみ。マルケスが所属するグレッシーニは来季も1年落ちのマシンで走らなければならない。ホンダのワークスチームで6度のタイトルを獲得しているマルケスはワークスチームの凄さを良く知っているし、レースの世界において1年という時間がマシンの進化に与える影響を良く知っているからだ。 しかしドゥカティ陣営の当初のプランは、これまで大きな貢献をしたマルティンをワークスチームに昇格させ、マルケスをプラマックに移籍させるものだったと言われる。だが、マルケスはプラマック入りを拒絶。グレッシーニでワークスマシンが手に入らなければドゥカティ陣営を離れる可能性もあり、急遽ドゥカティがマルケスのワークス入りを決めた、というのがここまでの流れである。 ドゥカティを最強軍団に育て上げたジジ・ダッリーニャ・ゼネラルマネージャーは、「早い時期にもうひとりのライダーを発表できる」と語り、アプリリアのマッシモ・リボラ・マネージングダイレクターは発表後のドルナ・スポーツのインタビューに対し、「日曜日の夜に急きょホルヘとの契約を決めた」と急転直下の決定劇だったことを明かした。もはやマルケスのドゥカティ・ワークス入りはほぼ確実であり、あとは正式発表を待つばかりである。 ドゥカティ陣営にとっては苦渋の決断だったに違いないが、正しい判断だったと思う。なぜなら、マルケスが1年落ちのマシンで驚異としか言いようがない走りを披露している事実を、ドゥカティ陣営はもちろん、だれもが良く知っているからだ。 ドゥカティの23年型デスモセディチGPと24年型には、パッと見ではわからないが多くの違いがある。ワークスマシンに乗るバニャイアとマルティンが「24年型は進化している」と事あるごとに語っているし、イタリアGPのタイムを見ても、バニャイアは11周のスプリントのタイムで約11秒、23周の決勝レースでは約25秒、それぞれ昨年の記録から短縮している。 1周で1秒以上の進化というのは驚異的としか言いようがない。その最大の要因はエアロにあると想像され、超ハイスピードサーキットのムジェロでは24年型デスモセディチGPが表彰台を独占した。1年落ちのデスモセディチGPに乗るマルケスは一時3番手に浮上するも、結果は約2秒遅れの4位。それだけでも驚きだが、ドゥカティに乗ってわずか7戦で何度も表彰台に立ち、チャンピオン争いに加わっているという実力は誰もが認めざるを得ない。
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