【インドの銀行に死蔵?】ロシアが石油を輸出しても収入は懐に入らず、戦費調達へなされたスキーム
インドのモディ首相が7月8日から9日にかけてロシアを訪問し、9日にはプーチン大統領との首脳会談が開催された。モディ首相による訪露は、約5年振りとなる。中国一極依存が指摘されるプーチン政権にとり、インドというもう一つの戦略的パートナーの存在は死活的に重要であり、しかもモディ首相の側が訪露してくれたことは、この上なくありがたかったことであろう。 【図表】インド・ロシア間の貿易額推移 首脳会談の中でモディ首相は、「戦場では解決策を見付けられない」と訴え、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に懸念を示す場面があった。ただ、モディ首相としても、プーチン大統領にそのように迫っても、聞き届けられる可能性はないことは、ある程度承知の上だったのではないか。ましてや、モディ政権が、ウクライナでの和平を実現するために、インド自身の国益を犠牲にすることはまずなかろう。
ロシアの戦費を実質的に支えるインド
ロシア・インド首脳会談を総括する共同声明には、両国が2030年までに往復1000億ドルの貿易額を達成するという目標が示された。そこで、図1に過去10年間の両国間の輸出入額をまとめてみた。 ウクライナ侵攻開始後、ロシアは詳しい貿易統計を発表しなくなってしまったので、これはインド側から見た輸出入額である。確かに、23年の時点で往復657億ドルなので、30年に1000億ドル達成というのは、丁度良い目標にも思える。 ただ、図1に見るロシアとインドの二国間貿易は、ずいぶんといびつな姿になっている。21年までは平凡に推移していた貿易額が、22年になって急増し、しかもインド側の輸入だけが突出して伸びている。 その原因は、ロシアが22年2月にウクライナへの全面軍事侵攻を開始して以降、先進国がロシア産石油を買わなくなり、割安になったその石油をインドが爆買いし始めたことに尽きる。ちなみに、23年には、インドの対露輸入の81%が原油・石油製品によって占められた。 石油輸出の急増の結果、23年の時点でインドにとりロシアが第2位の輸入相手国に躍り出た。だが、インドの輸出相手国としてロシアは取るに足らない存在であり、23年の時点でシェア0.9%、順位30位にすぎない。