Amazon、生成AIで「Alexa」大改良か ChatGPTに対抗
米アマゾン・ドット・コムが音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」の機能を強化し、サブスクリプション(定額課金)サービスとして提供する計画だと、米経済ニュース局のCNBCが報じた。生成AI(人工知能)を組み込み、米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」などに対抗する。 ■ Primeとは別料金で運営 アマゾンの有料会員プログラム「Prime(プライム)」とは別料金になる見通し。生成AIの運用には膨大なコストがかかる。その費用を賄うために別途料金を設定する必要があると、事情に詳しい関係者は話している。サービスの開始は2024年内を予定している。 Alexaの新バージョンでは、より自然な会話が可能になるという。この数カ月で競合チャットボットの技術革新が一気に進んだ。こうした中、かつて創業者ジェフ・ベゾス氏の肝煎りプロジェクトだったAlexaチームは今、強いプレッシャーにさらされているという。 情報筋によると、チームは現在、AI競争の中でAlexaを十分に耐え得るサービスへと進化させることを使命としている。大規模な組織再編を経て、大部分の業務がAGI(汎用人工知能)の開発に変わったという。 ■ オープンAIとグーグルの動き 競合のオープンAIは2024年5月13日、新型のAIモデル「GPT-4o(フォーオー)」を発表した。GPT-4oはテキスト、画像、音声の任意の組み合わせを入力として受け取り、それらの任意の組み合わせを出力として生成する。テキスト、画像、音声の入力と出力をすべて同じニューラルネットワークで処理することで実現した。
その翌日の5月14日には、米グーグルがAIモデル「Gemini(ジェミニ)」ファミリー全体にアップデートを導入したと明らかにした。より軽量で、高速かつ効率的に動作するように設計した「Gemini 1.5 Flash」などを発表した。 アマゾンは2014年、Alexaの音声操作機能で消費者を驚かせたが、最近のAIの飛躍的な進歩の中で、その機能は時代遅れと感じられるようになった。現在、Alexaや米アップルの「Siri」を利用している多くの人は、タイマーやアラーム、天気予報といった基本的な機能しか使っていないとCNBCは報じている。 米ニューヨーク大学(NYU)教授のスコット・ギャロウェイ氏は、オープンAIとグーグルが発表した最新AIモデルを「Alexa・Siriキラー」と呼んでいる。 ■ Alexaの強みとリスク それでも世界の何億もの世帯に設置されている専用機器がAlexaの強みだと、チームは考えている。アマゾンによれば、2023年時点で、同社は5億台以上のAlexa搭載機器を販売しており、消費者市場で一定の基盤を築いている。 一方、Alexaがこの規模で家庭のリビングルームやキッチンに入り込んでいるという事実が高リスクにつながるといった指摘もある。もしAIが利用者のコマンドを適切に理解できなかったり、信頼性の低い情報を提供したりした場合、アマゾンが支払う代償はより大きなものになるという。 ■ ベゾス会長の関与は続く 会長を務めるベゾス氏は、アマゾンがAI分野で後れを取っていることを懸念する人物の1人だという。CNBCによれば、ベゾス氏は依然としてAIへの取り組みに「深く関与」している。同氏は最近、幹部宛ての電子メールで、一部のAIスタートアップ企業がなぜアマゾンのクラウドサービスを選ばず、他社サービスを利用しているのかと質問し、幹部が取っている施策の有効性に疑問を呈したという。
小久保 重信