飛行機の隣に“太りすぎた客”が来たら? 航空各社の対応、日米では大きな違いも
座席を変更するための事前準備
大柄の方が隣に座る可能性を予見することは難しいが、事前に対策を講じることができる。たとえば、座席選択時に中間席を避けたり、座席の余裕がある場所を選ぶことで座席幅を確保することが可能である。一般的には降機に時間のかかる後部座席に空きがあることが多い。降機に時間が掛かると言ってもせいぜい5分の差も出ない程度だ。それを我慢すればフライト中の長い時間が快適になるのであれば、後部座席は悪くない選択だと言える。また、頻繁に飛行機を利用する場合で上級クラスに空きがあれば、その場で対応できる航空会社に限られるが、マイレージプログラムを活用して座席のアップグレードを検討することも一つの手段である。
JAL、ANAの運送約款には?
航空会社には「運送約款」という規定が存在し、これは旅客の安全と快適さを保証するために設けられている。輸送の為のバイブルであり、この存在を知っておくとスムーズな旅ができる。たとえば日系航空会社の場合、ホームページの最下段にある「運送約款」などと書かれたタブをクリックすると読むことができる。 JAL、ANAともにほぼ同じであり、国際旅客運送約款の第10条「運送の拒否及び制限」には、「他の旅客に迷惑を及ぼす可能性がある場合、航空会社は旅客の運送を拒否する、あるいは降機させることができる」と記載されている。 この規定に基づき、極端な場合には航空会社が大柄のお客様に対して別途対応を求めることができる。こうしたケースでは、対象の方は2席分の座席を購入するか、ビジネスクラス以上の広い座席を選択することが推奨される。本来この規定はチェックインカウンターで発揮されるべき内容のものであるが、人により見た目の判断は難しいものだ。すりぬけてしまった場合は、搭乗ゲートでの対処になり、それでも通過してしまった場合は機内で対応することになる。
アメリカの航空会社の「プラスサイズ」への対応は?
アメリカなど、肥満率が高い国では「プラスサイズ」という言葉が一般的に使われており、大柄の方々が快適に航空機を利用できるよう、いくつかの航空会社が対応策を講じている。「Simple Flying」という航空メディアでも取り上げられているように、サウスウェスト航空では、プラスサイズの乗客が2席分を事前に予約し、到着後に1席分を払い戻しを受けられる制度を導入している。これにより、乗客は他の旅客に迷惑をかけることなく、快適なフライトを楽しむことができる。 さらに、ジェットブルーやデルタ航空も、座席の広さや追加席の購入オプションを提供しており、大柄の乗客に配慮したサービスを展開している。ジェットブルーでは、通常席でも38インチ(96㎝)のシートピッチであり、これは一般的なエコノミークラス31インチ(79㎝)よりも8インチ(20㎝)広い数字になっている。デルタ航空では、エコノミークラスの座席幅は17.9(45㎝)~19インチ(48㎝)で、一部の航空機ではさらに広い座席を提供している。 これらの航空会社は、プラスサイズの旅客に対して寄り添う姿勢を見せ、旅客全員が快適にフライトを楽しむことができるよう努力している。全ての乗客に快適なサービスを提供するという公共交通機関の基本ポリシーに則っている。 デルタ航空の数字は、エコノミークラスの快適性で評判のJAL国際線で使用されることの多いボーイング787型機の座席幅48㎝とほぼ同じだ。 国内線で比較的短距離の旅行の場合など、どうしても解決が難しい場合は、心の余裕を持って状況を受け入れることも一つの方法である。フライトは限られた時間であり、一時的な不快感に対して寛容な態度を取ることが、自分自身のストレスを軽減することにつながる場合もある。 客室乗務員は、あなたに対して最大限の気遣いを見せてくれることだろう。それはそれで記憶に残るフライトになるのではないだろうか。<文/北島幸司> 【北島幸司】 航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing
日刊SPA!