<前人未到に挑む―センバツ東海大福岡>/上 「先輩たちに恩返し」県大会の“壁”突破 甲子園でも8強超え誓う /福岡
「自分たちが県大会8強の壁を超えて先輩たちに恩返しをする」。センバツ出場を決めた東海大福岡の1、2年生には忘れられない試合がある。2023年7月23日の福岡大会準々決勝、大牟田戦。チームは22年秋、23年春は福岡大会8強にとどまり、3年生中心のメンバーは「夏こそ8強の壁を超える」と強い覚悟で臨んだ大会だった。しかし、試合は大牟田の主戦に完封されて0―1の惜敗。涙を流す先輩たち以上に、1、2年生にとってお世話になった先輩たちともう一緒に野球ができないことが何よりも悔しかったという。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 2日続けて翌24日も部員が甲子園への思いを強くする試合があった。観戦した熊本市のリブワーク藤崎台球場であった熊本大会決勝。多くの人がスタンドで見守る中、系列校である東海大熊本星翔の選手が躍動していた。「ヒット1本であんなに盛り上がるんだ」「これが甲子園だったら応援はどれだけすごいんだろう……」。勢いそのままに東海大星翔は5年ぶり3回目の夏の甲子園出場を決める。東海大福岡の部員は隣県にある系列校の活躍を目の当たりにして「次は俺らがやる」と思いが一つになり、チームの目標は福岡大会8強の先にある甲子園出場となっていった。 そんな部員50人をまとめる主将は井上和翔捕手(2年)だ。新チームが発足した23年8月、2年生全員が1日ずつ主将を交代した後、選手の投票で選ばれた。井上主将は「一人一人の個性が集まったチーム。それぞれが自分はこうなりたいという理想を持ち、その良さを出せれば勝利につながる」と語る。逆境に屈することなく4強に進んだ23年秋の九州大会の球場には引退した3年生も駆けつけ、主戦だった西村健さん(18)は「自分たちの壁だった福岡大会8強も破ってくれて頼もしい」と後輩たちをねぎらった。中村謙三監督は「全員が同じ方向を向いて役割を全うできたのが勝因」と振り返る。 チームの今年のスローガンは「前人未到」。短期、中期、長期の目標を掲げ、3年生が逃した「県大会8強の壁」を超えることを目指しつつ、17年の「センバツ8強」という先輩たちの記録を塗り替えることも見据える。 新年を迎えた1月7日、選手たちは宗像市の宗像大社で祈願。大舞台である甲子園での8強超えを誓い、「前人未到」という目標に向けて走り出した。 ◇ ◇ 東海大福岡が7年ぶり3回目のセンバツ出場を決めた。チームの戦力や特徴、選手らを支える人、選手紹介を3月まで3部に分けて掲載する。今回は1部としてチームの戦力などをお送りする。【長岡健太郎】 〔福岡都市圏版〕