自由競争にすればタクシー会社は駆逐される、日本版ライドシェア解禁で求められるあるべき姿
■ 自由競争にすれば、タクシー会社は駆逐される ──各市町村に、ライドシェアや交通の管理を任せていった場合、上手に管理できている自治体と、うまく管理できない自治体と、場所によって質に差が出てくる可能性もあると思います。 太田:日本の場合「親が子どもに対して温情を持って指導する」という考え方があると思います。子どもたちがおかしなことをしないように、親が指導するということです。同じように、全ての地方が失敗しないように、国が全体の面倒を見る。これを温情的干渉主義と呼びますが、そういったやり方に日本人は慣れています。 ただ、その結果、地方に甘えが出ます。自分たちが真剣に考えて、市民・住民のために動くことを半ば放棄する結果につながる。そういう方向に政府が誘導している側面もあるように思います。 失敗があっていいのです。失敗を経験しながら、改善する努力をすればいい。あるいは、どこかが成功例を出せば、それを参考に自分たちのシステムを改善することもできる。これは、交通に限った話ではありませんが、地方の政策立案能力を磨いていく必要がある。 今後、金利が上がり、日本国の抱える国債の利払いで財政が圧迫されていくと、自治体への交付金や補助金が減っていく可能性もあります。その結果、国が地方に「自分たちのことは自分たちでやってください」と、要請せざるを得ない展開になるかもしれません。 だからこそ、地域公共交通も含めて、地方自治体の政策立案能力を上げていく必要がある。 ──ライドシェアと従来のタクシーの間で競争が始まると、どうなりますか? 太田:日本で、ライドシェアの話が盛んに議論されるようになってきたのは、2015年あたりからだと思います。 新経済連盟(JANE)はライドシェアの解禁を求めてきました。「タクシー事業者とライドシェア事業者は切磋琢磨しながら共存できる」「その結果、より良い地域公共交通ができる」という主張です。でも、私は共存は難しいと思います。 タクシー会社は車両とドライバーを抱えており、ドライバーの社会保険や年金、車両の適正なメンテナンスにかかる費用などをタクシーの運賃収入から捻出しなければなりません。 これに対して、ライドシェアの場合、ドライバーは自分の車を使用します。多くの場合、ドライバーが考えるのはガソリン代と自分の手間賃のみなので、価格調整がしやすい。費用構造が根本的に違うので、本当に自由競争にしたら、タクシー事業者は駆逐されてなくなると思います。 実は、この部分が他の産業と異なる部分なんです。