【オリックス】守備の名手36歳にパ記録3失策で芽生えた「怖さ」引退危惧も復活お立ち台に安堵
<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム> あの“悪夢”から3週間が過ぎたころだったか。「まだ引きずってんの?」。久々に会ったオリックス安達了一内野手(36)に、あえて軽いトーンで声をかけた。つらい経験だっただけに、会話が重々しくなるのが嫌だったから。すぐ帰ってきた言葉はこうだ。「そりゃ引きずるに決まってるでしょ!」。 【写真】適時失策にガックリ肩を落とす安達 5月1日ロッテ戦(ほっともっと神戸)の9回、安達は二塁手イニング3失策のパ・リーグ新記録をマークしてしまった。この回だけで5点を奪われる逆転負け。時は過ぎ、久々の会話で安達は続けた。 「今はまだ、怖いです。守ってて、怖さがあるんです」 守備の名手が、恐怖心が芽生えてしまったと打ち明けた。プロ13年目。36歳のベテランでもそんなことになるのかと驚いた。コーチ兼任だけに、より責任が重くのしかかっていたのか。ひょっとしたら、1軍復帰はおろか、もうこのまま引退してしまうのかもしれないと思った。 だから今月13日に1軍復帰し、15日に先発して3安打した時はうれしかった。中年記者は昔から知るベテランを応援したくなる。 茶野、太田、西川と並んだ京セラドーム大阪のお立ち台。打席での気持ちをインタビュアーに聞かれた安達は、真っ先に言った。 「そうですね…。まず始めに、えー、ほっともっとで、ちょっといろいろやらかしてしまって、いっぱい応援している中で、やらかしてしまって、すいませんでした。本当、一時期野球が怖い時期もあったんですけど、何とか、この場に立てて本当に気持ちいいです。良かったです」 打った心境を「すんごいホッとしました」と語ったのは、偽らざる本音だろう。ベンチ裏に戻ると「もやもやしかなかった。ほっともっとのエラーから、チームの流れもあまり良くなかったというのは分かっているので」とつぶやいた。今回がラストチャンスの気持ちだったと打ち明けた。 今年の始めにはこんなことを言っていた。「大事にしたいのは、守備ですね、自分は。守備とやっぱりチーム打撃が求められるので」。その肝心の守備で苦しみ、葛藤を抱え、それでも1軍戦線に戻ってきた。3失策した翌日、中嶋監督の呼びかけで、試合前にキャッチボールしてもらった心遣いにも感謝している。 野球はミスを取り返すことができるスポーツだと、誰かが言った。「ここからまた、いろいろみんなの信頼とか新たにつかみたい」。36歳の再出発だ。【オリックス担当=大池和幸】