『ギークス』物語がより深みを増す 作品のテーマと見事に呼応するサンボマスターの主題歌
サンボマスターの主題歌「自分自身」に込められた普遍的なメッセージ
そんな中、事態は意外な展開を見せる。捜査の結果、ジャッジマンの正体がエミリのサロンの元従業員、笠原京子(道上珠妃)であることが判明。この衝撃的な事実を受け、エミリのサロンは閉店に追い込まれた。その際、激怒したエミリの豹変ぶりは、普段の穏やかな印象とは一転。その迫真の演技に、SNS上では「乙葉ってこんな演技もできるの?」と驚きの声が続出したほどだ。 「西条と仲間たちの気軽な会話」が本作の魅力の中心だが、第8話では物語がより深みを増してきたように感じる。特に注目すべきは、西条が犯人と対決する場面だ。 西条の「他人を借りて憂さ晴らしをする」という言葉は、今回の犯人だけでなく、これまでの物語に登場した様々な加害者の行動を的確に表現しているように思えた。 「誰であっても自分のこと以外は、他人の気持ちなんて理解できないんです」 この回では、そんな西条の言葉に重なるように、たとえ身近な人であっても「人の気持ちが分からない」状況が随所に描かれていたのではないか。基山は弟・文太(東島京)の自転車無断使用の真相(おばあさんを助けるため)を知らずに悩んでいたし、吉良も長年の知人である馬場園(ウエンツ瑛士)が自分に向ける視線の意味を理解していないようだった。こうした「分からなさ」があるからこそ、人は誰かに愚痴をこぼしたくなるのかもしれない。本作は、他人を理解することの難しさと、だからこそ大切な身近な人との対話について視聴者に問いかけているとも感じられた。 本作の主題歌「自分自身」は、作品のテーマと見事に呼応している。サンボマスターが木曜劇場の楽曲を担当するのは、『電車男』(2005年/フジテレビ系)のエンディングテーマ「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」以来、実に19年ぶり。歌詞は、孤独や苦悩を抱えながらも自分らしさを貫く“ギーク”たちの姿を描き、希望を歌い上げる。これは登場人物たちの姿勢を映すと同時に、視聴者への力強い応援歌としても響く。私たち一人一人の内なる“ギーク”に勇気を与え、自分らしく生きることを肯定的に捉える。そんな普遍的なメッセージが、この曲には込められているのだ。 第9話では、西条と安達(白洲迅)の関係性はもちろん、基山と父との関係修復や、吉良と元夫の再婚問題など、家族をめぐる展開にも動きがありそうだ。定時帰りをモットーとする3人の私生活は、どこに向かっていくのだろうか。
すなくじら