米政界、下院議長選の混乱で波乱の幕開け 15回の投票でようやく選出の背景に深刻な共和党の危機【ワシントン報告①結社と議会】
議長選は異例の5日間に及んだ。下院議場を見下ろす記者席からマッカーシー氏をのぞき込むと、還暦手前の白髪はよく目立つ。気さくな人柄だが、トランプ前大統領を批判したかと思えば、すぐにすり寄る無定見ぶりでも知られる。じっと前を向いて座っている。その胸に去来するのは自省か、憤りか。なかなか過半数を得られない中、強硬派に譲歩を次々と重ねた。 ▽過激化 結社は時に過激化する。大統領選の敗北を認めないトランプ氏の呼びかけに応じ議会を襲撃、扇動共謀罪などで有罪となった極右団体オースキーパーズの構成員は典型だろう。 そうした危険性を抱えながらも、政治学の権威ハーバード大のパットナム教授は、結社に基づく重層的な人のつながりが豊かな社会には不可欠だと説く。著書「ボウリング・アローン」(邦訳「孤独なボウリング」)で「結社が充実したコミュニティーは、政府を『彼らのもの』ではなく『われわれのもの』と考え、これが政府の正統性につながっている」と論じた。
トランプ氏の影響下にある共和党は有益な結社か。強硬派の多くはトランプ氏の敗北を認めていない。保守派コラムニストのブレット・スティーブンズ氏は「まともに政治に取り組んでおらず、自分の名前を売りたいだけだ」と切り捨てた。 「分断極まり、何も決まらない1年になる」(下院スタッフ)。展望は暗い。秋以降は次期大統領選モードが本格化する。