脳死臓器移植の施設強化を政府に提言…自民党の議員連盟、診療報酬の増額など
自民党の臓器移植を考える議員連盟(会長・田村憲久・元厚生労働相)が、政府に近く提出する今年度の提言で、脳死下の臓器提供の大幅な増加にも対応できるよう、移植施設の体制強化を柱に据えたことが分かった。東京大などの移植施設で、人員や病床の不足から、提供された臓器の受け入れを断念する事例が相次ぐ問題を受けたもので、移植施設に支払われる診療報酬の増額を含めた見直しや施設間の連携を具体策として盛り込んだ。 【図解】ひと目で分かる…脳死疑いの人数と実際に判定された人数には大きな開き
議連は提言を27日の総会で正式決定後、武見厚生労働相に提出する。政府は21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に、臓器提供の増加を踏まえた移植医療提供体制の構築を明記しており、今後、議連の提言も踏まえ、移植医療の逼迫(ひっぱく)を防ぐ政策を検討する。
提言では、早急に対策を求める項目として、移植施設の体制強化のほか、臓器をあっせんする体制の充実も加えた。都道府県が関係団体や医療機関に配置する都道府県臓器移植コーディネーターの増員や処遇改善を求める。
さらに、脳死の可能性がある患者の家族に、臓器提供の説明を適切に行える体制の構築なども要望する。
昨年度の提言では、海外での臓器あっせん事件を受け、国内の提供を増やすため、脳死の可能性がある患者の情報を医療機関があっせん機関に通報する制度の創設を求めた。これを踏まえ、厚労省は今年度、こうした患者の情報を病院間で共有する事業を始めた。
提供増加による医療ひっ迫が背景
自民党の議員連盟が、今年度の提言で臓器移植の実施施設の体制強化を打ち出した背景には、提供増に伴い、移植医療が逼迫(ひっぱく)していることへの危機感がある。
政府は、脳死判定や臓器摘出が行われる臓器提供施設への支援に重点を置き、国民への啓発も重ねてきた。ようやく臓器提供が増えてきたのに、東京大などの移植施設では、病床や人員が不足し、提供された臓器の受け入れを断念する事態が起きている。議連事務局長の三ツ林裕巳衆院議員は「移植を待つ患者が多くいるのは問題だ。今後の提供増を見据えた移植医療体制の拡充が必要だ」とする。