女性医師の大城さんがエベレスト登頂「美しいが怖い場所だった」
長野県出身の女性医師、大城和恵さん(50)が5月17日に世界最高峰のエベレスト(8848メートル)の登頂に成功しました。発表した山岳医療救助機構によると、エベレスト登頂後の下山途中に死亡した女性医師の例があるため、女性医師として登頂と下山を無事成功させたのは初めて。認定国際山岳医の大城さんは長野県の北アルプスなどで医療を通じた遭難防止に取り組んでおり、「今回の経験を今後に生かしたい」としています。
三浦さんが背中から見守ってくれていた
大城さんは長野市出身、札幌市在住。循環器・内科医で、これまでに6000メートル級のデナリ山頂(北米)からスキー滑降、マナスルにチームドクターとして登頂するなど経験を重ね、2013年には冒険家の三浦雄一郎氏が世界最高齢エベレスト登頂を果たした際のチームドクターも務めました。 登頂後、大城さんは山岳医療救助機構を通じて「三浦さんが80歳で登頂したときのザックを背負って登頂しました。三浦さんが背中から見守ってくれていました」とコメント。 世界最高峰のエベレストの厳しい環境について大城さんは「今回は優れたチーフガイドにより、アタック隊全員登頂を果たしたが、他の隊では酸素をボンベから調整する機器が8500メートルで突然破損する事故で酸素を失う登山者がいた。スペアの機器で酸素を交互に吸って下山し、命をつないでいた。美しいが怖い場所だった。まさに死と隣り合わせの場所にいたと感じた」と報告しました。
また「今後も山の医療を熟知し登山経験もある医師として、実践的な遭難防止に取り組みたい。山岳遭難の防止に医療はまだまだ貢献できることを一層確信したエベレスト登頂となりました」と述べました。 国際山岳医の認定も受けている大城さんは、登山を医療の視点でとらえながら遭難防止に取り組んでおり、登山での脱水症防止など身近なテーマで登山者に助言しています。
2016年には北ア・涸沢や白馬岳などで遭難防止団体などとともに、だるい、食欲がないなどの「かくれ脱水」の予防を指導するなど活動を広げています。 山岳医療救助機構によると、日本人女性医師のエベレスト登山は、2004年に広島県の医師が登頂後の下山途中8500メートル地点で死亡しています。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説