オードリー・タンが語る「頭の中」、大人でもまねできる働き方と学び方
オードリー・タン氏は、10代の頃に台湾と米国でソフトウェアの企業を立ち上げた異才のプログラマーとして、あるいは台湾のデジタル行政や政治のデジタル化を推進してきた主導者として広く知られている。働くことや学ぶことに対する彼女の姿勢、あるいは未来を見つめる視点を中心にまとめた日本語訳の書籍『オードリー・タン 私はこう思考する』(語り:オードリー・タン、取材・執筆:楊倩蓉、翻訳:藤原由希)を、かんき出版が11月7日に上梓する。 【画像】オードリー・タンは「大人も「子どもに戻る時間」を見つけてほしい」と語る 今回オードリー・タン氏(以下:オードリー)が、本書を上手に読み進めるためのヒントをForbes JAPANの読者に向けて語った。 ■成功とは、仲間たちと一緒に成し遂げること 本書の前半では、これまでの人生において企業人として、あるいは政治家として多忙を極めてきたオードリーが効率よく仕事をこなしつつ、QOLの向上や学びを通じて新たな知識を得るために実践してきた「1日の過ごし方」を詳しく紹介している。 特に第5章・第6章の中で、彼女は仕事や学びに対する姿勢、あるいはチームワークの中で「共好(ゴンハオ)」という価値観を貫いてきたことについて繰り返し述べている。共好とは、そこに参加する人々が交流を深めながら共通の価値を探り、それぞれに成功を獲得することだ。 オードリーは「成功」の形をどのように描いているのだろうか。彼女は「私にとって成功とは個人の成果を追い求め、積み重ねることではありません。周囲の人々、あるいは次世代を継ぐ人々に私がどれほど貢献できるか、役に立てるかというところに重きを置いている」のだと答える。 「明日はもっと良くなることを信じて、次世代の人々が各々の可能性を存分に発揮できるものやシステムを残すことが今の私たちに課せられている使命だと考えています。それを実現した時に私は充足感を感じるのです」 オードリーは幼い頃に先天性の心臓病を患っていた。12歳の時に受けた大きな心臓手術により現在は病を克服したが、幼い頃のオードリーは日々生活の中で死を、いつでも自身に起こりうる出来事として意識しながら暮らしていた。そのことが「今日のことは今日終わらせる」という習慣と、たとえ明日には自分が消えてしまっても、積み上げてきた物事を周囲の人々が分かち合い役立ててもらえれば悔いはないという、オードリーの価値観の基盤をつくった。