<インド その6~瞑想を妨げる「公害」>高橋邦典
車にオートバイ、それから客を乗せたオート三輪や人力車が、ホーンをけたたましく鳴らしながら夕暮れ時を過ぎた街を交差する。仏教徒にとって聖地の一つであるブッダガヤは、年中を通して巡礼者や観光客で賑わう町だ。今年1月、町の中心にあるマハボディ寺院の周辺道路を対象に、「ホーン禁止令」が施行された。 マハボディ寺院には、そこで仏陀が悟りをひらいたといわれる菩提樹があり(正確にはオリジナルの樹から4代目になるらしい)、早朝から日暮れまで、多くの人たちが経をあげたり、瞑想に耽って時を過ごす。瞑想の妨げになる車やバイクのホーンに対する苦情は昔からあり、実はこのホーン禁止令も名前だけは以前から存在していたという。有名無実の状態だったこの禁止令を、NGOや学生組織、僧院などが協力して施行にこぎつけたのだ。警察の発表によれば、禁止令によって騒音レベルは半分にまで下がったという。 ひっきりなしに鳴らされるホーンの、甲高い音の洪水は耐えがたい苦痛でもある。大気汚染やゴミ問題の陰に隠れがちだが、騒音はれっきとした「公害」なのだ。 (2014年12月撮影)