長引くドル高、想定外の市場に再考迫る-堅調な米経済や粘着インフレ
(ブルームバーグ): 強いドルが戻り、これは当面続きそうな状況だ。世界の金融市場は2024年で見込んでいなかった想定外の力に直面している。
今年に入り、ドル安を予想していた投資家らは、米利下げを遅らせる堅調な米経済と粘着インフレで再考を余儀なくされている。
国際通貨基金(IMF)は、米経済が主要7カ国(G7)諸国の2倍のペースで成長すると予測しており、「米国例外主義」を巡る議論は活発化。株式や債券利回りが下支えされ、ドルの魅力も高まっている。また、地政学的対立が激しくなる中、ドルは引き続き究極の逃避先として君臨している。
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ブルームバーグのドル指数は今年4%余り上昇し、全ての主要な先進国と新興国の通貨に対する値上がりを反映している。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、トレーダーのセンチメントを測る一般的な指標は年初に弱気だったが、その後反転し、2019年以降で最も強気になっている。
ドルを巡る戦略を再調整する動きでは、世界2位の運用会社バンガード・グループがドル高は続くと予想。UBSアセット・マネジメントは通常の評価よりも20%高くなっているにもかかわらず、ドルは恐らく一段と上昇すると分析している。また、ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュート(WFII)は年末までにドルが弱まるとの予測を撤回し、25年までドル高が続くと見込んだ。
バンガードの国際金利責任者、アレス・クートニー氏は「他国が米国の成長率やインフレ率に及ばないのであれば、ドルを買う以外に選択肢はない」と指摘。「以前は非常に戦術的な取引だったが、今では持続的なドル高と米経済の強さに対する長期的で構造的な見方が強くなっている」と話す。
多くが予想していた減速を米経済が回避したことを示す多くの兆候を背景に、ドルが上昇している。労働市場は引き続きタイトで、製造業活動は拡大を続けている。それに伴う粘着インフレで、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長らは利下げ実施まで待つ期間が以前の想定よりも長くなるとの認識を示唆した。