犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える「保護司」の今 山陰の現状と改題は…(島根・鳥取)
山陰中央テレビ
犯罪や非行をした人が立ち直るのを地域で支える「保護司」。 無報酬の民間ボランティアで、全国で約4万7千人、山陰でも約870人が活動しています。 しかし、今年5月、滋賀県で保護観察中の男が支援を受けていた保護司の男性を殺害する事件が起こり、そのあり方について議論が起きています。 曲がり角に差し掛かっている保護司の活動、山陰の関係者たちはどのように感じているのか、現状と課題を取材しました。 今年5月、滋賀県大津市で起きた殺人事件。 殺害されたのは保護司の男性、容疑者は、この男性が立ち直りを支援していた保護観察中の男でした。 保護司は、専門的知識を持つ国家公務員の保護観察官と連携して、犯罪や非行をした人に対し、生活上の助言や就労援助などを行いその立ち直りを支援する「民間のボランティア」です。 全国で約4万7千人、島根・鳥取両県ではあわせて約870人が登録されています。 滋賀県で起きた事件について、山陰の保護司はどのように見たのでしょうか。 益田市の保護司・安達貞則さん: 「不思議です。そんな風にはならないというか、僕は危険を感じたこともないし、どうしたらそんなことになるのだろうと。対象者が殺すほど怒りがどうして生まれたのか、不思議な感じがする」 益田市に住む安達貞則さん67歳。 保護司として約10年前から活動しています。 これまで、万引きや飲酒運転などをして保護観察となった人たちに接してきました。 益田市の保護司・安達貞則さん: 「なんの罪も犯さずに過ごしている人と、観察対象者になっている人って何も変わらない。本当に周りの環境、だと思う。(危険に対する考え方を)持っておかないといけないけど、それよりもっとそれを上回るいい話がいっぱいあると思う」 島根・鳥取両県では今回の事件を受けて、保護司を辞退した人はいないといいますが、法務省の調査では回答者の約1割にあたる保護司が不安を訴えています。 こうした中、10月6日、保護司制度の見直しに関する法務省の有識者検討会は牧原法務大臣に最終報告書を提出しました。 今回の事件を踏まえ、安全対策として自宅だけでなく公共施設なども保護観察者との面接場所として利用できるよう対象を広げることも盛り込まれました。 山陰では松江と鳥取にある保護観察所でも安全対策に取り組んでいます。 鳥取保護観察所・伊藤義博所長: 「今後、保護司会や観察所から個別具体的なご相談をさせていただく場合などご協力いただきますようお願いを申し上げます」 鳥取保護観察所は9月中旬、保護司会とともに、鳥取市内の公民館長の会合でより多くの公民館を面接に利用できるよう協力を呼びかけました。 この要請にある館長は前向きな姿勢を示しますがその一方で…。 鳥取市内の公民館長: 「まだ保護司の人と相談をしている段階ではないので情報を共有しながらルールがもし作れるなら、そういうルールが必要かなと思う」 不特定多数の住民が利用する公民館。 対象者が特定されないよう配慮が必要で、実現にはハードルが残ります。 一方、島根県内では、安全対策にもつながる先進的な取り組みを取り入れている地域があります。 県西部の益田市、津和野町、吉賀町を担当する益田地区保護司会は、1人の対象者に原則2人の保護司で対応する「複数配置」を山陰両県で唯一、3年前から導入しています。 益田地区保護司会・草野和馬会長: 「以前は保護司になったけど、辞める時に一度も保護対象になった人を持ったことがないという声を聞いたこともあって、2人体制でベテラン保護司と新人がタッグを組んで、新人の保護司は勉強になる」 益田地区では定員のほぼ100%を確保、都市部に比べ、対象になる事件も少ないことから「複数配置」が可能だといいます。 犯罪や非行をした人の社会復帰に重要な役割を果たす保護司制度。 その担い手は島根・鳥取両県で全国平均を上回る定員9割以上を確保しているものの、平均年齢も高く、後継者の確保は大きな課題です。 さらに大きな使命を担う一方で、報酬のないボランティアという実態。 事件をきっかけに、様々な問題点も浮き彫りになるなか、どのように持続可能な仕組みに変えていくのか保護司のあり方をめぐり模索が続いています。
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