地図記号数は減っている!?新しく生まれた「老人ホーム」や「風車」。社会の変化に応じて地図も変わる
地図を読む上で欠かせない、「地図記号」。2019年には「自然災害伝承碑」の記号が追加されるなど、社会の変化に応じて増減しているようです。半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた「地図バカ」こと地図研究家の今尾恵介さんいわく、「地図というものは端的に表現するなら『この世を記号化したもの』だ」とのこと。今尾さんは、「現実社会の姿が変われば従来の記号では十分に表現できないことも出てくる」と言っていて―― 。 【図】「老人ホーム」「風車」「電子基準点」など…新しい記号はこうやって使われている! * * * * * * * ◆「電子基準点」の記号 地形図の記号はドイツなどの影響を受けながら長く使われてきたものが多いが、現実社会の姿が変われば従来の記号では十分に表現できないことも出てくる。 戦後の傾向としては統廃合による記号数の減少が顕著だが、そんな中で新しい記号もいくつか誕生した。 この30年を概観すれば、まず平成9年(1997)に登場した「電子基準点」がある。 これは米国のGPSや日本の「みちびき」といった人工衛星(GNSS衛星)の電波を受信するもので、高さ5メートルほどのマッチ棒を立てたような形をしている。 地形図の骨格となる三角測量を行うために明治期から三角点が整備されてきたが、現在は衛星の利用で従来よりはるかに高い精度での位置測量が可能になった。 誤差は数センチ単位まで縮まったため、微細な地殻変動の監視にも役立てられている。電子基準点の記号は三角点と電波塔の記号を合体させた形で、その性格をイメージしやすいものだ。
◆「博物館」と「図書館」の記号 その後は「平成14年図式」の制定に伴って登場した「博物館」と「図書館」の記号である。 まず博物館だが、国立の立派な施設から民家の一部を利用したものまで多数ある中で、記号の適用対象は国土地理院が博物館法や文化財保護法で規定する施設に該当するか否かで定めている。 美術館もこの記号で表されるが、こちらも小規模なギャラリーなどは含まれない。両者に相当するミュージアムという英語がギリシャ神話での芸術の女神ムーサ(ミューズ)に由来することを考えてか、博物館記号の形はアテネのパルテノン神殿を思わせるものになった。 もう一つの「図書館」は見ての通り本を開いた形で、「図書館法に規定する公立図書館」を表示するとしている。 分館は除外するので市町村なら表示が1ヵ所のみの所も多いが、合併などで市内に含まれた旧町立図書館が表示されていることも。 政令指定都市の分館では並みの市立図書館より大きく内容も充実した館がいくらでもあるから、記号の基準が少し厳しすぎるかもしれない。 大きな図書館の分館に記号がないのに、その隣に位置する交番が記号になっているのを見るとアンバランスを感じてしまう。